アサダワタル 日常再編集のための発明ノート

美容院美術館が各地で生まれる未来

寒竹泉美の月めくり本

葉月本 :『そっとね』 えちがわのりゆき

野村雅夫 フィルム探偵捜査手帳

時空を超えた最高の避暑地ウミガラス島 ~なまいきチョルベンと水夫さん~

真子 レシピでつながる世界の景色

ライムミントのヌードルスープ(マレーシア)

風戸紗帆 建築素人のデザイン体験記

和紙への文様付けを体験するの巻

インタビュー 藤原次郎 さん

(聞き手/牧尾晴喜、原稿構成/風戸紗帆)

築をテーマにした『A Scene of Architecture ある建築の情景』シリーズでの海外受賞などでも注目を集めている映像作家、藤原次郎さん。作品制作や国内外での活動から感じることについて、お話をうかがった。

-------著名な建築を周辺環境との関係とともに撮影しているシリーズ作品『A Scene of Architecture ある建築の情景』を発表されています。どのようなことを意識して撮影されていますか?
藤原: 一般的に映像にはナレーションや解説があって、たとえば建築関係のものなんかだと、建築家がコンセプトやフォルムについて解説していることが多いです。僕はそういうスタイルではなく、ナレーションや解説は入れていません。また、動画ですがカメラを固定して、できるだけ真正面から撮影をしています。カメラを絶対に振らないし、ズームもしないんです。そして「ある建築の情景」というタイトルを思いついて撮り始めました。建築をそのまわりの情景を、一年を通して撮っていくことで何かが見えるのではないだろうか、と。

-------撮影の苦労話があればお聞かせいただけますか。
藤原: シリーズの最初は「兵庫県 木の殿堂(設計:安藤忠雄/安藤忠雄建築研究所)を撮影しています。このときは、雪の降るシーンを撮るときに特に苦労しました。この建築がある兎和野高原は、一番雪の降るところなんです。足跡のない朝に撮りたいと思っていたんですが、歩くどころか雪の中を泳がないといけないほど積もっていました(笑)。
 次に雨です。「ある建築の情景」の映像で雨のシーンがあるんですけど、バケツをひっくり返したような豪雨で、一瞬でカメラが雨をかぶり潰れてしまいました。
 それともう一つ苦労したのは、音ですね。今の時期だったら、ちょうどセミが鳴きますよね。セミの鳴き声は、海外に出すという前提で、演出的に言ったらノイズなんですよ。ヨーロッパやアメリカでは、セミの鳴き声は、日本で感じるのとは別のイメージになってしまいます。また同じような時期の同じ場所で、ただしセミの鳴き声が入らないように撮り直しました。
 そういった苦労はありましたが、安藤忠雄さんからも「四季を通じて表情を変えて行く建築の姿を見るのはとても新鮮ですばらしいものでした」と言ってもらえて嬉しかったです。

-------シリーズの今後の展開をお尋ねします。
藤原: シリーズとして10作品くらいは撮影したいなということを思っています。現時点で、安藤忠雄さんが設計された木の殿堂に続く、栗生明さんの植村直己冒険館、高松伸さんの植田正治写真美術館が制作中で3つは形になっています。この後も続けてやっていきたいなと思っていますが、現実的にいろいろな許可や撮影のタイミングなどもあるので、同時進行になるのか、ひとつずつ間を置いての撮影になるのかは分かりません。
 同時進行だと苦しくなるかなと思っていたけれど、そうでもなかったです。僕は建築の専門家ではないですが、色々と分かってきます。建築を本質的に理解するという意味ではないですが、一見同じように見える部分も、全然違うんです。コンクリートの打ちっぱなしで直線的にデザインしているという共通点があっても、建築や空間として全然違う雰囲気だということがあります。このシリーズの撮影を通じてそういったことに気づいて、僕自身もびっくりしました。

-------地方の風景を撮影されている作品『但馬スケッチ』では、どういうことを意識されましたか?
藤原: 但馬は、昔からの日本の風景がきっちりと残っている場所です。なので、但馬というひとつの場所なんですが、この風景は日本のどこにでも当てはまるんです。それぞれの人が、自分たちに置き換えることができる。
 人が歩いていったり、仕事をしていたり、鳶が飛んでいたり。極端な話、れんげ草が風でなびいているぐらいの小さなものであっても、何らかの場所性が表現されます。この地域に住んでいる人たちにとっては、近くにあるものだけれど、普段はこういったところを見ていないんです。現代人には、風景を眺めてたしなむような時間はなかなかないですから。通勤の時は車で走っていくので、田んぼは「田んぼ」としか見ていないんです。毎日のように田んぼに行くひとでも、たとえば田んぼの水面をじっと眺めるようなことはしていないと言っていました。
 こういう撮影をきっかけにして祭りなんかも撮っていくと、こういった地域の根本となる、塊みたいなものが見えてくるような気がしたんです。祭りには観光用の見せ物のようなものも多いですが、地域に根ざした祭りの風景を見たり、なぜ祭りをするんだという疑問を持ったり……。映像を観た人がそれぞれに気づいたり、感じたりしてくれると嬉しいです。

-------昨年には「田んぼ」がテーマの写真集が刊行されました。
藤原: やっぱり日本の風景の原点ですね。長い歴史の間、綿々と繰り返しています。西洋の畑と違って、田んぼに水を満たすと水面になって、全部が湖になると言うか、風景が変わります。これは美しい。稲の成長に従って風景が変わっていって、最後は刈り取られて何もなくなって、また雪が降って。それをずっと繰り返すわけです。身近に、しかも日本国中、北海道から沖縄まで全部あります。日本の全体に通じるものがあるんじゃないかなあと改めて感じて、写真集のテーマに選びました。空と田んぼで画面が上下真っ二つに分かれている構図にこだわっています。

-------藤原さんの映像作品は、海外での受賞も多いです。国内や地元の人と違って、海外の人は撮影場所についての予備知識がないことが多いと思いますが、いかがですか?
藤原: 海外でも都会であれば、能、歌舞伎、お茶などの古くからの伝統芸能、さらに最近ではアニメのような最先端の情報も溢れています。僕もパリのイベントに行く際には「次郎さん、向こう行ったらお茶の話はするなよ。向こうの人の方が詳しく知っているから」と言われました(笑)。実際に、谷崎潤一郎が書いた『陰翳礼讃』のことなんかも知っているんです。ただ、東京や京都以外の日本についてはあまり発信されていないので、城崎の映像を流したんです。皆さん、日本の地域の映像に食い入るように観ていました。日本の風景と現地の風景とは明らかに違いますから。

-------子供の頃はどうでしたか?
藤原: 僕は電気屋の次男坊でした。小さいときはラジオだけだったのが、急速に電化製品が増えていって、テレビは白黒からカラーになりました。そういう時代の影響もあって、小さいときからテレビを観ていて、まさに映画の『三丁目の夕日』の世界です。
 高校では写真と映画に興味を持ちました。特にヨーロッパ映画が好きでした。当時は映画や映像は自分ではできないと思っていたので、いろんな写真を撮ってストーリーを妄想していました。近所の新聞記者から「写真をやるなら本物を使え」とNikonの一眼レフカメラ(フォトミック)を貸してもらい、撮影にますますのめりこんでいったんです。今はデジタルで何枚でも撮りっぱなしができるけど、当時はフィルムで現像するのにお金がかかるので、一枚一枚必死になりました。そんなふうに撮ることが好きになって、映画が撮りたいということで、大阪芸大に行くようになったんです。

-------今後はどんな映像を撮っていきたいですか?
藤原: 他の人がやらない映像を撮りたいです。YouTubeなどで瞬間風速的な映像も多くなっていますし、空撮なんかも多いですけれど、そういったものだけでなく、情緒的なものや、じっくり観ないと分からないようなものにチャレンジしたいと思っています。
 『ある建築の情景』シリーズでは建築と映像がテーマと言っていますが、映像という切り口での空間表現みたいなものです。建築空間だけの話ではありませんが、映像を通して観ることで魅力が一層強まるものもあると思います。



『A Scene of Architecture ある建築の情景』
兵庫県 木の殿堂(設計:安藤忠雄/安藤忠雄建築研究所)
制作:藤原次郎、音楽:十河陽一、後援:安藤忠雄建築研究所・兵庫県但馬県民局
 
植村直己冒険館
撮影:藤原次郎
 
植村直己冒険館
撮影:藤原次郎
 
植田正治写真美術館
撮影:藤原次郎
 
植田正治写真美術館
撮影:藤原次郎
 
『城崎スケッチ』から
撮影:藤原次郎
 
田平線
藤原 次郎(著)
北星社(2013/08)
 
藤原次郎(ふじわら じろう)
1955年兵庫県生まれ。
テレビ番組・CM制作を経て、建築写真制作会社へ。1999年頃から映像作品制作活動を本格的に開始。2013年のワールド・メディアフェスティバル特別賞"Magic Wave Award"、金賞(建築映像部門)、同銀賞(旅行・観光映像部門)のダブル受賞をはじめ、国内外での受賞多数。
 

美容院美術館が各地で生まれる未来

阪に住んでいたときに行きつけの美容院があった。そこは各席の前にiPadが設置されてあり、いつも映画が流れていた。ハリウッド映画ではなく、だからと言ってミニシアターでしか流れないようなマニアックすぎる映画でもなく、ちょっとええあんばいの気の利いた映画が流れている。僕のカットを担当してくれたAさんは映画マニアで、いつも流れている映画の解説とともに、類似する映画や、いま近くの映画館で上映中のオススメなどを独自の見解で語ってくれた。僕は個人的に、美容院でスタッフの方と話すのが苦手で、できればカット中はそっと放っておいてくれる方がいいというタイプなんだけど、ここでの会話は別だった。帰りにTSUTAYAに寄って実際薦められたDVDを借りて帰ったほど、この密なコミュニケーションを楽しんでいたのだ。
 話は変わってあるとき、「筑波に展覧会をやっている美容院がある」という記事を見た。店内で作品の展示をするようになったきっかけは、店長と筑波大学出身の写真家との出会いだったらしい。その写真に惚れ込んだ店長が、写真家に個展の開催を依頼。それ以後、定期的に様々な作家の展覧会が開催されているという。美容院はもちろん「髪を切りに行く」という目的以外で人が訪れることはない。でも、それだとどうしても常連さんがばかりになって、「コミュニティ」としては風通しが悪くなってしまう。でも、そのように展覧会をすれば、髪を切らずとも色んな人たちが自由に足を運んでくれる。こういった考えを持つ美容院があること自体がとてもステキで、感銘を受けたのだった。
 つらつらと美容院のエピソードを書いたけど、ここで言いたかったことは2つある。まず、美容院とはスタッフとの濃密で豊かな対話が生まれる環境であること。そして、美容院特有の目的以外に、多様な人が集まれる空間として機能しうる可能性がまだまだあることだ。僕はこの2つの要素が密接に繋がれば、より豊かな時間が流れる美容院が生まれるのではないかと考えている。例えば、ここで展示されている作品がきっかけになって、カットの時間がちょっとした「対話型鑑賞」の時間へと変化したり、空間の持つ力がきっかけになって、お客さんが普段はあまり人には言わない、パーソナルな文化的志向についてスタッフに存分に打ち明けられる機会になったり。あるいはお客さん同士が展示を通じてご近所友達になれたり。あるいは、作品に触発されて、新たな髪型に挑戦する気分になってしまったり…。そんなことを実現させてくれる「美容院美術館」。そんな妄想は、小さいながらも具体的な実践として、各地で繰り広げられつつあるのだ。あなたの住む街にも、いつか生まれるかもしれない。

参照記事


(イラスト:イシワタマリ)

アサダワタル
日常編集家/文筆と音楽とプロジェクト
1979年大阪生まれ。
様々な領域におけるコミュニティの常識をリミックス。
著書に「住み開き 家から始めるコミュニティ」(筑摩書房)等。ユニットSJQ(HEADZ)ドラム担当。
ウェブサイト

葉月本 :『そっとね』 えちがわのりゆき

きどき、いや、しょっちゅう、ものすごくダメな日が訪れる。自分のことが大嫌いになって、今までの過去の発言や行動を思い出して「あー!」と叫びたくなって、自分以外の人が全員うらやましくなって、何をやってももうだめだと思う、そんな日がある。
 誰にも会いたくないのに、さみしくて仕方がないものだから、ネットに言葉をまき散らす。でもそんなときの言葉はたいていろくでもない。甘えた後ろ向きなことしか言えないから、誰にも喜ばれないし、それどころか誰かを傷つけたり、誤解を生んだり、よけいなことばかり引き起こす。黙っていたほうがいい。
 大好きな本や映画や音楽も、こんなときには全部毒になる。すばらしいものはすべて嫉妬の対象になって、落ち込むもとになる。本屋は鬼門。人気作家の本が山積みになっている本屋に行くと、一瞬でダークサイドに落ちてしまう。
 人にも会えず、書くこともできず、本や映画を楽しむこともできない。

 でも、この絵本は、読めるのです。


そっとね
「そっとね」
著・えちがわ のりゆき
定価:本体価格1400円+税
出版社: リトル・モア (2014/5/21)

 目を凝らさないと消えてしまいそうな書影だけど、まあこういう本なのである。で、表紙で微笑んでいるのは、「うんこ」のように見えるんだけど、著者によると、これは、うんこなのかもちなのか分からない「うんころもち」なんだそうだ。
 人間の体の仕組みを解説する科学本ではないので、うんころもち君は、別に消化管を通ったりはしない。わたしたちと同じように、すねたり喜んだり悲しんだりして生きている。
 これ、別に、う、うんこじゃなくてよくないですか? てか、うんこかもちか分からないって、食べていいのか食べてよくないのか、分かんないし、じゃあこれはもちです!って言われても食べる気しないし、うんこです!って言われても、何だかもちかもしれないって思ったら粗末にできないし。重大なアイデンティティの崩壊が起こるんですけど。なんなんですか!うんころもちって!!!
 という、わたしの戸惑いをよそに、うんころもち君は、あくまでマイペースなのである。この消え入りそうな灰色の輪郭で、目尻を下げてにこにこしながら、いろんなことをつぶやくのである。
 どれだけしょんぼりしていても、なぜかこのうんころもち君の言うことだけは聞ける。そして、じんわりなぐさめられる。
 癒しって言葉、好きじゃないけど、癒されるとしか言いようがない。なんでしょうね。この魅力。うんこもおもちも、生きるのに欠かせないものだからかなあ。
 しかし、わたし、公の場でうんこって書いたの、これが初めてだな……。せっかくだから、もう少し書いておくか。うんこ…・うんこ…うんこ…うんこ…。書いてるとだんだん楽しくなってくる…!!これからは落ち込んだ時は、うんこうんこってノートに書きまくったらいいかもしれない!
…・人に見られたら本気で心配されると思うので、誰もいないところでやりますけどね。

寒竹泉美(かんちくいずみ) HP
小説家
京都在住。小説の面白さを本を読まない人にも広めたいというコンセプトのもと、さまざまな活動を展開している。現在は自身が脚本・出演・演出をする朗読劇(2014年12月14日上演)の準備中。

時空を超えた最高の避暑地ウミガラス島 ~なまいきチョルベンと水夫さん~

ぁ、私だ。スウェーデンにまたしてやられた。6月にも『シンプル・シモン』を扱ったばかりではないか。しかも、今回はなまいきな小娘に、しかも、半世紀前の作品にすっかり魅了されてしまったのだ。私としたことが…。「なまいき」と言えば私の中ではシャルロットと相場が決まっていたはずなのに、このチョルベンときたら、貫禄すら感じるぽっちゃりさんで、お世辞にも主役タイプではない。ところが、である。映画を観終わる頃には、否、正直に明かせば、始まって10分ほどで、私はスクリーンに突入して今すぐこの避暑地ウミガラス島に上陸したいと思ってしまった。チョルベンと海に飛び込みたくなったのだ。
 弾ける笑みを繰り出すパンパンの顔。丸々と発育した臀部。素直すぎて大人もたじろぐレベルに鋭い舌鋒。少女チョルベンは、これまた容姿の似通った大きな愛犬「水夫さん」といつも一緒にいる。そんな彼女が、アザラシの赤ちゃんを漁師から譲り受けて友達と飼い始めるのだが、この漁師が少々問題のある人物で、どうやら動物学者に高値で売れるらしいと知るや、チョルベンからアザラシを取り返そうとし、騒動が始まる。
 原作は、ラッセ・ハルストレムが映画化した「やかまし村シリーズ」や、日本ではミュージカル版でも名高い「長くつ下のピッピシリーズ」を手がけたスウェーデンの国民的女性童話作家リンドグレーン。そして、監督は子供の演出に長けたヘルボム。どうして日本公開にこれほど時間がかかってしまったのか定かではないが、何はともあれ劇場で観られるのをことほぎたい。
 犬にアザラシ、ウサギに羊、そして狐。これは禁じ手だろうと訴えたくなる水準に達する動物たちのかわいさ。わかりやすすぎない程度に抑えた人物たちの特徴付け。白夜が続く夏の自然光のみを使用したロケ。大人からすれば察しのつく物語展開で、テンポも実に淡々としている。マイナス要素に思えるかもしれないが、これがむしろ自然で奏功している。観客も一緒に休暇を楽しんでいるような気分になるのだ。ただ、これは下手をすると退屈になるわけで、そのリスクを絶妙に回避しながら、動物たちの「表情」に意味を与え、子供たちののびのびとしたリアクションを捉えるカメラワークにはヘルボムの手腕が光っている。労働に対する価値や想像を膨らませる楽しさ、そして何より自然と戯れる歓びが教訓として押し付けがましく浸透するので、映画館が親子連れで賑わうと素晴らしいだろう。大人は大人で、北欧のサマーハウスならではの調度や服装の色彩感覚に目を奪われるだろう。夏休みだからといって長い休暇を取れない日本の親子にはうってつけのバカンスだ。チョルベンは「遅かったわね。さ、遊びましょ」とウミガラス島を案内してくれるだろう。

(C)1964 AB SVENSK FILMINDUSTRI ALL RIGHTS RESERVED

『なまいきチョルベンと水夫さん』

全国で公開中

監督:オッレ・ヘルボム
脚本:アストリッド・リンドグレーン
原作:アストリッド・リンドグレーン著 『わたしたちの島で』(岩波書店刊)
出演:マリア・ヨハンソン、クリスティーナ・イェムトマルク、ステフェン・リンドホルム、トシュテン・リリエクローナ、ルイーズ・エドリンド、ベングド・エクルンド

字幕翻訳:三笠真希/字幕監修:菱木晃子
1964年/スウェーデン/スウェーデン語/92分/デジタル/ビスタ
後援:スウェーデン大使館
配給:クレストインターナショナル


野村雅夫(のむら まさお)
ラジオDJ/翻訳家
ラジオやテレビでの音楽番組を担当する他、イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」代表を務め、小説や映画字幕の翻訳なども手がける。
FM802 (Ciao! MUSICA / Fri. 12:00-18:00)
Inter FM (Happy Hour! / Mon., Tue. 17:00-19:00)
YTV (音楽ノチカラ / Wed. Midnight)

ライムミントのヌードルスープ(マレーシア)

レーシア人の友人が作ってくれたさっぱり爽やかな麺料理。ひとくち食べて「日本人むき!夏の素麺にマンネリしてきたときのバリエーションのひとつに使えそう!」と目が輝いた一品。魚介ダシの汁は塩とナムプラーで味付け。生の玉ねぎスライスときゅうり、ミントをトッピング。茹でたえびを添えて、ライムをたっぷりと搾って召し上がれ。

真子
スケッチ・ジャーナリスト
タスマニアと名古屋でデザインと建築を学ぶ。専門はグリーンアーキテクチャー、療養環境。国内外の町や森をスケッチブック片手に歩き、絵と言葉で記録している。
ウェブサイト

和紙への文様付けを体験するの巻

回は京都の南区にある、和紙を扱っている会社、和紙来歩(わしらいふ)さんに行ってきました!ショールームは、カラフルでいろんな模様の描かれた襖や、透き通るガラスの中に和紙が入っている和紙ガラス、和紙で出来たインテリアグッズに囲まれた素敵な場所です。
 業者向けの卸問屋として昔からお仕事をされていますが、広く一般の人にも和紙の魅力を知ってもらおうと、和紙来歩という会社を新たに立ち上げられたということです。和紙業界や伝統産業の衰退の話をお聞きしましたが、そういえば私の実家にも和室はなくて、身近なところでも和風のものが減っていることを感じます 。和紙来歩さんでは和紙を身近なものにするため、和紙を使ってさまざまな商品開発をされています。
 今回は、職人さんが襖用の大きな和紙に文様付けの作業を行っている場所を見学しました。扇風機がまわるなか、職人さんが汗を流しながら 和紙に文様をつけています。そしてなんと、私も文様付けを体験させていただくことに!一つの文様が一般的な団扇くらいの大きさがある、 下がり藤の文様を選びました。下がり藤が描かれたスクリーン型を和紙の上において、ノリをつけた木のヘラを使ってなぞり、ノリを和紙にのせていきます。ゆっくりと上や横から2回ずつ程度なぞり、終われば型を外すのですが、やはり職人さんのようにはできず、べったりとノリがついてしまいました(笑)。伝統的なノリの種類・素材は、雲母(キラ)、胡粉、こんにゃくいも等です。キラと呼ばれる石の粉は少し輝いていたり、胡粉という貝の粉は真っ白だったり、それぞれのノリの素材によっても、文様の雰囲気は変わります。また、「手作業なので同じものは二度と作れない」と、うかがって、手作業の難しさと奥の深さを知りました。
 伝統的な和紙の製造工程を少し体験させていただきましたが、そうやって作られた和紙を使い、さまざまな商品開発が進んでいます。たとえば、夏らしいものでは団扇があります。唐船屋さんという印刷会社とのコラボレーションで開発されました。団扇と言っても、形はいわゆる扇形ではなくて左右非対称で、まるで雫のような、優しい曲線が印象的です。
 余談です。この取材中に個人的に気になったのが、倉庫に保管されていた、襖用のたくさんの引き手です。引き手ひとつにしても、値段が100円くらいのものから数万円するものまであったり、形もさまざまでした。鶴の形をした引き手(数万円するもの)が特に可愛かったです。私が今住んでいる家に襖はありませんが、どこか壁にでも付けたいなと思いました。


風戸紗帆(かざと さほ)
京都精華大学人文学部3年生(2014年4月に3年生になりました。)
文章を書くのが好き。柔道初段を持っている。ちなみに得意技は一本背負い。