アサダワタル 日常再編集のための発明ノート

点鼻薬の自動販売機がほしいのだが……

寒竹泉美の月めくり本

文月本 :「家」とは何か―アルヴァロ・シザの原点

野村雅夫 フィルム探偵捜査手帳

19世紀のロックスター見参! ~パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト~

真子 レシピでつながる世界の景色

サマーサイドディッシュ(パキスタン)

風戸紗帆 建築素人のデザイン体験記

バムとケロに出会っての巻

インタビュー 松本希子 さん

(聞き手・進行 牧尾晴喜)

べんとうコンシェルジュとして、食文化にまつわるメニュー・商品開発や企業ブランディングに携わっている松本希子さん。彼女に、お弁当や日本文化にまつわる話やその可能性についてうかがった。

-------お弁当による場づくり・コミュニケーションづくりと日本文化を発信している『Oh! Bento Labo(おべんとうラボ)』のお話からうかがいます。立ち上げの経緯は?
松本: ひとつは、長野県の大鹿村での"地芝居"を観にいったことです。大鹿村にはふるくから続く村人が演じる歌舞伎があり、春と秋の公演はすごく盛り上がります。みんな、立派な箱に詰めた「ろくべん」っていうハレの日のお弁当を持って見に行きます。お酒とおひねりも持って。地域のお祭りのような、劇場ではない場所での歌舞伎。そんな特別な場で、お弁当が大活躍しているのを目のあたりにしました。たとえば、お花見や運動会みたいな場には豪華なお弁当を持っていきますよね。そんなふうに日本にはハレとケのお弁当があるのだと改めて気づかされました。
 もうひとつは、ちょうどそのころ海外でも、キャラ弁ブームの影響からお弁当が日常的な「BENTO」として流行し始めていました。しかし、日本のお弁当の神髄ともいえる、ハレの日やコミュニティのなかでのお弁当の存在感のような、お弁当を取り巻く文化的な部分までは知られてはいません。日本でも、最近はお弁当が日常的なものとしてのみ消費される傾向が強いように感じます。そういう意味で、改めて日本のお弁当文化を国内外に発信したいと思い『Oh! Bento Labo』を立ち上げました。

-------『二十四節気』をテーマにした、季節感が溢れるお弁当も提案されています。
松本: 大まかにいえば、気候・季節の変化にあわせた節気が一ヶ月に2つあります。節気にあわせて食材を分けるってとても難しいですが、たとえば「立秋」や「処暑」など二十四節気の言葉に込められているイメージを大切にしています。旬の食材は意識しますが、出始め、いわゆるハシリの食材は高く、また料理屋ではないので、気軽に手に入る時期を待ちつつ、節気の季節感をどう設えるのかを考えています。

-------お弁当づくりでのアドバイスってありますか?
松本: 日本のお弁当って、やはりご飯があっての存在なんです。普段の料理にも通じることですが、ご飯に合わせるおかずは、酸味・甘味・辛味・苦味・旨味という五味を意識して、色々な味をちょっとずつ、できるだけ多く入れるようにしています。しっかりした味の椎茸の甘辛煮を入れるのなら、卵焼きは甘くせずにだし巻きにするとか、おかず全体で味のバランスをとるようにしています。おかずの間にご飯を咀嚼していくことで美味しく食べる、というのが本来の日本の食事。さまざまな味がお米のデンプン質によって混じりあうおいしさがあります。
 もうひとつは、やはり色合いです。緑と黄と赤の三色は食欲増進の色、おいしさを倍増してくれます。そして、お弁当を上手に詰めるには、まずご飯のラインを決める。次に大きなおかずの位置をきめると、他のおかずのポジションがおのずと決まってきます。最後に隙間を埋める食材を入れて全体のバランスを整えます。持って移動するお弁当は、隙間をできるだけ埋めることで、美しい状態を保つことができます。隙間おかずというのは結構大切なんです。

-------各地の特産品を使ったお弁当や日本酒とのコラボレーションなど、お弁当をテーマにした場づくりも展開されています。
松本: 今年からは、ワインや日本酒などとあわせたリアルイベントも開催しています。たとえば6月には、新茶の季節ということで、おいしいお茶の淹れ方とお弁当といった切り口で行いました。8月24日(日)には、最近『Oh! BentoLabo』のイベントの拠点にさせていただいている中崎町のコモンカフェで「浴衣deビール!Oh!BentoLabo納涼会」 を開催します。

-------子どもの頃はどうでしたか?
松本: 幼稚園の頃から料理番組を観るのがすごく好きでした。小さい頃から料理を手伝ったり作ったりする機会は多かったですね。その影響なのか、おいしくするための手順を知ることがとても好きでした。こういう風に切るのかとか、一度茹でてから使うんだ、とか。それと、食への興味が一層深まったきっかけは、息子がアトピーから8ヶ月で小児気管支ぜんそくを患ったことですね。食養生を意識して、滋養が高い旬の食材にこだわるようになりました。

-------企画や編集のお仕事もされています。
松本: なぜコピーライターになったかっていうと、広告の仕事が人気があった時代ということもありますが、チームで何かを創りあげていくというのが基本的に好きなんです。コピーライターとしてチームの一員としてアイデアを出しあい仕事を創りあげるのが好きでした。なので私は、「文章が書きたいとか得意だからコピーライターなんです!」というよりは、どちらかというとプランを立てる方が好きですね。高校生のときは放送部で文化祭の脚本とかも書いたりしていました。いまのおべんとうコンシェルジュの仕事にもつながっています。

-------今後、『Oh! Bento Labo』の活動をどのように展開していきたいですか?
松本: お弁当はコミュニケーションのプラットフォームになると考えています。単に食べる物ということだけでなく、お弁当箱に様々な食材を詰めるように、いろんなヒト・モノ・コトが『Oh! BentoLabo』に集まることで、日本のお弁当文化の奥深さを知ってもらい、新しいストリーを紡ぎだしたいと思っています。日本文化っていうとおこがましいですが、日本人のお弁当には、日本人が自然に寄り添ってきた民族特有の感性や季節感が表現されていますよね。日本だけでのことでなく、BENTOという言葉がフランスの辞書に掲載されているほど、すでに海外でもポピュラーな存在になってきているのであれば、フランスのパリジャンが考えるパリ弁当もあるはず。日本の弁当に触発され、さまざまな国の文化によって変化し、進化した海外育ちのBENTOが日本に逆輸入されるようになると面白いかなと思っています。そのためにも、日本人が愛するお弁当文化をしっかり伝えていきたいと考えています。



二十四節気のおべんとう 立冬
 
二十四節気のおべんとう 清明
 
「浴衣deビール!Oh! BentoLabo納涼会」
8月24日(日)12:30-15:00

これまで『Oh! BentoLabo』では、おべんとう×ワイン・日本酒・お茶とマリアージュを楽しんでいただきました。今回は地ビールと屋台フードで、残暑をおもいっきり楽しむためのイベントをご用意します!
場所:Common Cafe
〒530-0015 大阪市北区中崎西1-1-6
吉村ビルB1F
Tel 06-6371-1800
 
京都カラスマ大学での授業風景
 
京都カラスマ大学での授業風景
 
みんなのOh! Bento
松本 希子(著)
日東書院本社(2013/5/29)
 
松本 希子(まつもと きこ)
おべんとうコンシェルジュ。株式会社ルセット代表取締役
「食のデザイン」をテーマに食と文化のコミュニケーションプロデュースを中心に商品開発や企業ブランディング、メニュー開発を行う。
2011年2月『Oh! Bento Labo』プロジェクトを立ち上げ、二十四節気弁当、芝居弁当の企画制作を行いながら、日本のお弁当文化を世界に向けて発信し、新ジャパンブランドを確立する活動を推進している。
平成23年度 おおさか地域創造ファンド「デザインプロデュース型商品開発促進事業」コーディネーター。
宝酒造株式会社『季節のおいしいエッセイ』、株式会社 神戸風月堂 新商品開発 ブランディング フードコーディネート、など。
 

点鼻薬の自動販売機がほしいのだが……

はアレルギー鼻炎持ちだ。しかも慢性の。別に花粉の季節だからとか関係ない。とにかく鼻がよくつまるので日頃から点鼻薬を常備している。世間はタバコの値上がりで、タバコの本数を減らしたり禁煙に踏み切ったりするなど悩んでいる喫煙家が多いようだが、僕はタバコこそ吸わないけど僕にとって点鼻薬はタバコみたいな感じで(多分)使ってるものでひと時も手放せない。大体2時間ごとに一回。だから長時間のイベントに出演する際は、どのタイミングでお客さんにばれずに点鼻するか(じゃないと劇的な鼻声になってしまう)ってことが僕にとっては非常に重大な課題だ。

これまでいくつかの種類を試したけど、一番よく使っているのが「ヘルビック」というもので、これほど自分にとって効くものはなかった。だから近所のダイコクドラックなどで定期的に買い溜めしておく。でも時に予備を買い忘れて、とっても困る時がある。そんな時に限って夜中だったりして店閉まっていることもしばしば。コンビニで売ってくれたらいいんだけど、あいにく医薬品はコンビニでは取り扱えない。そこで常日頃「点鼻薬の自動販売機があれば……」と。きっと僕みたいに慢性的な鼻づまりに悩んでいる人間にとっては、点鼻薬自動販売機の設置は大変ニーズのある事業なはずだ。ひとまず、僕の大好きなヘルビックの販売元である、明治製菓株式会社さんに早速メールフォームでこの件について問い合わせてみた。以下はそのやりとりである。

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タイトル:ヘルビック点鼻薬
メッセージ:ヘルビック点鼻薬を愛用しているアサダと申します。いつも薬局で購入しているのですが、例えば御社では、今後ヘルビックを始めとした点鼻薬を自動販売機で販売するような計画はございませんでしょうか?実現すればとても入手しやすくなるように思ったのでご提言させていただきました。お返事いただけますと幸いです。
お名前:朝田 亘(←本名)
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タイトル:明治製菓です。
メッセージ:浅田 様
ヘルビック点鼻薬をご愛用いただきましてありがとうございます。また、この度は大変興味あるご提案、お問い合わせありがとうございました。
早速、関係部署に確認したところ、残念ながら薬事法により、自動販売機での販売はできないことがわかりました。
一般用医薬品の販売は販売業の許可が必要になります。そして店舗での販売です。第3類の一般用医薬品についてはネット薬店での販売が可能ですが、本剤は一般用医薬品の第2類に分類されていますので、ネットも許されておらず、店舗での対面販売となります。
医薬品は手にとって、くすりの内容を確認して選んでいただかなければなりませんし、上記の薬事法上の決まりもありますので自動販売機での販売は許されていないという状況です。
貴重なご提案をありがとうございました。上記、ご了承いただければ幸甚です。
今後とも、明治製菓商品及びホームページをよろしくお願いいたします。
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寂しい回答が返ってきてしまった。しかも苗字の漢字まで間違えているし……。もうこうなったら自分たちで作るしかない。このプロジェクトは到底一人では技術面、資金面でも難しいし、まずおそらく制度的な面をクリアーするのに時間がかかるだろう。誰か恊働してみないでしょうか?


(イラスト:イシワタマリ)

アサダワタル
日常編集家/文筆と音楽とプロジェクト
1979年大阪生まれ。
様々な領域におけるコミュニティの常識をリミックス。
著書に「住み開き 家から始めるコミュニティ」(筑摩書房)等。ユニットSJQ(HEADZ)ドラム担当。
ウェブサイト

文月本 :「家」とは何か―アルヴァロ・シザの原点

「家」とは何かと聞かれて、わたしの頭に一番に浮かんだのは、実家にある何だかよく分からない人形やらダッシュボードやら食器やらバスタオルやらタペストリーやら、そういった類のものだった。それは生まれた時から家にあって、お世辞にも垢抜けてるとは言えないもので、何回引っ越しをしても捨てられることはなく、思春期の多感な時期のわたしや弟が「お母さん、これダサいよ。捨てようよ」と文句をつけてもなお同じ位置に居座って、実家を巣立って一人暮らしを経てひさしぶりに帰ってきたら、やっぱり同じところにある。そして、同じところにあることに、がっかりするようなほっとするような複雑な気持ちになる不思議なアイテムたちなのである。
 おととしに父が退職し、転勤がなくなり、ようやくひとところに腰を落ち着けられるようになった父と母は新築のマンションに住むことになった。それはもう夢のような素敵な最新型のマンションなのだけども、やっぱりそんな部屋にも、あのアイテムたちが居座っていた。それを見たわたしは、ああ、ここは確かにわたしの家なんだな、と思うのであった。


新建築増刊 「家」とは何か―アルヴァロ・シザの原点 2014年 05月号 [雑誌]
定価: 972円(本体900円)
発行:新建築社

 これは、建築家の巨匠アルヴァロ・シザが子供時代から半世紀にわたり、かかわってきた彼の自宅についての本である。子供のシザは家族とともにこの家で過ごし、15歳のときに自分と弟のためのアトリエを設計し、パヴィリオンを増築した。そして、建築家として仕事を始めて間もない28歳のときに父親をクライアントとしてこの家を改築した。
 当時のスケッチや図面や写真が載っているこの本を見て、建築に詳しい人なら、シザの建築の原点がここに!なんて感動するのかもしれない。でも、門外漢のわたしには、シザと彼の父のやりとりが面白かった。
 シザがバスルームを換気するために配管を露出させる設計をしたときの父親のセリフはこうだ。

「それにしても……これはひどい。家の中をセメントの筒が通っているなんて!」
「まったくぞっとする!」

しかし最終的にはシザの父は、シザの努力と熱意を認め、その設計を受け入れた。ほかにもある。シザが家具をこだわって購入する際のことだ。シザいわく、

父にオフィス用の家具セットを処分するように説得した時だけは、うまくいきませんでした。私はまったく気に入ってない家具だったんですが。

照明についても同じような出来事がある。

リビングルーム中央のシーリングライトを私は冗談で「スパイダー」(!)と呼んでいたんですが、それを外すように父をうまく説得できませんでした……。

「お父さん、この家具ダサいから捨てようよ!」
「ダメだ!これは絶対に捨てられない!」
そんなやりとりが聞こえてくるようで、わたしはひとりでにやにやした。どこの家でもありそうな光景だ。のちにその才能で世界を魅了するシザも家族のなわばり問題は解決できなかったんだなと思った。

 究極の「作品」を作るときにはあり得ないことかもしれない。でも、ときには美しさや調和や合理性より、「思い入れ」が勝ってしまう。それが「家」なんだと思う。個人の思いと思いが反応して、ゆがんで、ちょっとかっこわるくなって、でもそこに温度が宿る。それが家であり、家族なんだと思う。


家をつくることは、人が集い、分かち合う空間をつくることである。建築への純粋な興味、愛あるいは情熱といったものが接着剤の役割を果たし、煉瓦や石などいずれもが実体を与え、デザインに深さを添える。こうして建築は、個人の記憶や出来事に寄り添う存在となる。
――冒頭より

寒竹泉美(かんちくいずみ) HP
小説家
京都在住。
家族のきずなを描くWEB小説「エンジェルホリデー」毎日連載中。
デビュー作「月野さんのギター」の映画化企画が進行中。

19世紀のロックスター見参! ~パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト~

ぁ、私だ。貴君はご存知だろうか。最高のソングライターにしてヴァイオリニスト、ニコロ・パガニーニの生涯を。かく言う私は、恥ずかしながらこの作品を観るまで知らなかった。常識を超えた天才によく付けられる枕詞のひとつに「悪魔に魂を売り渡した」というものがあるが、パガニーニもまさにそうで、この映画はちょうど彼が敏腕マネージャーのウルバーニと契約をするところからスタートする。監督のバーナード・ローズは、この物語をゲーテの『ファウスト』にダブらせながら、ウルバーニを悪魔メフィストさながらに描くことで、音楽家としての抜きん出た成功とパガニーニの魂(人間らしい暮らしや心持ち)がどう拮抗するのかという軸を打ち立てて手際よく描いていく。鑑賞後にパガニーニの人生をまとめた年表と比較してみたところ、ゴシップ的な要素もあるドラマチックな逸話も含めて、彼の生き様を実にうまくまとめた心躍る伝記映画だとさらに強く印象づけられた。
 エポックメイキングなこのイタリア人を演じたのは、クラシックをベースにジャンルを越境して活躍するドイツのスーパーヴァイオリニスト、デイヴィッド・ギャレット。パガニーニの極めつきの難曲を17歳にして弾きこなした彼だからこそ成立する実演には、誰しもが息を呑むはずだ。リハーサル、居酒屋、投宿先、イギリスのキングス・シアターでの鬼気迫るパフォーマンス。音楽映画にとって繰り返しの見せ場であるがゆえに単調にも陥りがちな演奏シーンの数々に必ず物語上の意味を持たせ、場所や演奏形態にヴァリエーションをつけることで、音楽家にとってひとつとして同じ演奏などないということも改めて教えてくれる。
 それにしても、凄いのはギャレットの色気だ。すらりとした長身に長髪にサングラス。翳りを伴う端正な顔立ち。奇行と言われても仕方のないようなアクションのひとつひとつに、ロック・ミュージシャンのそれとしかいいようのない魅力が宿っている。
 挿入される曲目も当時のセットリストを参照して選んだという史実の尊重と、だからこそ成立する音楽的あるいは文学的な創造力をもってそこかしこに裏の意味を配する演出(詳しくはパンフレットに掲載の前島秀国氏の鋭い分析を参照されたい)。クラシックファンならずとも、音楽好きにはあまねく薦めたいフィルムの誕生だ。

(C)2013 Summerstorm Entertainment / Dor Film / Construction Film /Bayerischer Rundfunk / Arte. All rights reserved

『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』

TOHOシネマズシャンテ、Bunkamuraル・シネマ、新宿武蔵野館ほか、全国公開

監督・脚本・撮影:バーナード・ローズ
主演・製作総指揮・音楽:デイヴィッド・ギャレット
出演:ジャレット・ハリス、クリスチャン・マッケイ、ヘルムート・バーガー

原題:The Devil's Violinist
2013年/ドイツ/122分/英語/シネマスコープ/カラー/PG-12
配給:アルバトロス・フィルム/クロックワークス


野村雅夫(のむら まさお)
ラジオDJ/翻訳家
ラジオやテレビでの音楽番組を担当する他、イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」代表を務め、小説や映画字幕の翻訳なども手がける。
FM802 (Ciao! MUSICA / Fri. 12:00-18:00)
Inter FM (Happy Hour! / Mon., Tue. 17:00-19:00)
YTV (音楽ノチカラ / Wed. Midnight)

サマーサイドディッシュ(パキスタン)

パイスをたっぷり使ったカレーが恋しくなる季節。パキスタン人夫婦から教わったサイドディッシュを合わせて食べたい。細長いパラパラお米はグリーンピースとクローブ、丸ごと黒胡椒と一緒に炊き上げて。塩ヨーグルトで和えたトマトと玉ねぎを添えて。イチゴやリンゴなど果物と豆類にレモンをかけたフルーツサラダをデザートにいただく。

真子
スケッチ・ジャーナリスト
タスマニアと名古屋でデザインと建築を学ぶ。専門はグリーンアーキテクチャー、療養環境。国内外の町や森をスケッチブック片手に歩き、絵と言葉で記録している。
ウェブサイト

バムとケロに出会っての巻

回は体験記ではなく、デザイン空想記です!私の大好きな絵本、バムとケロシリーズについて書きます。
 島田ゆかさん著のバムとケロシリーズは、私が幼少期から好きな絵本です。バムとケロというキャラクターの日常がポップに描かれていて、全部で5作品あります。そのなかの一作、「バムとケロのもりのこや」は2011年に出版された新しい作品で、今年の3月に阪急梅田本店で開催されていた「島田ゆか絵本原画展」で出会いました。21歳になった現在でも、このシリーズに魅了され続けています。
 この絵本は、バムとケロがきいちごをつみに森へ出かけたときに古い小屋を見つけたところから始まります。2人はこの小屋を自分たちだけの秘密の場所にしようと決めて、何でも屋のソレちゃんに手伝ってもらいながらリフォームを始めます。最初はボロボロで汚かった小屋を3人で力を合わせて修理していくと同時に、居心地の良い小屋にするために、それぞれが好きなものをカスタマイズしてデザインしていきます。しっかり者のバムと何でも屋のソレちゃんがペンキ塗りをしたり、屋根の葉っぱを刈ったり黙々と作業を続けていくなか、お調子者のケロは棚の寸法を測らずに身長を測ってみたり、床の泥拭きにすぐ飽きてしまったり、ドアに自分の似顔絵を描いてみたりといつものペースで、場が和みます。
 私が影響されやすいタイプだからかもしれませんが、バムとケロシリーズを読むと、毎回何らかの影響を受けます。他作品の「バムとケロのにちようび」ではドーナツをつくるシーンがあり、私も実際にドーナツをつくりました。「バムとケロのおかいもの」のときは、ケロちゃんが買い損ねたオカリナが欲しくなってオカリナを買ってもらっています。今作では、3人が小屋をリフォームしているのを見て、マンガを収納する横長の本棚をつくりたくなりました。しかしこれは実現せず、空想のままで終わってしまいましたが……。
 この絵本の、淡いけど鮮やかさのある独特な色使い、ときどき入る漫画のようなコマ割り、愛嬌のある絵柄、その全てが好きな理由で、大人になった今でも新作が出れば買って読みたいと思っています。保育園の貸し出し絵本で、たまたま借りたことがきっかけで好きになり、私に影響を与え続けてきたこの絵本。その世界に魅了され、これからも私に何らかの影響を与えてくれるのではないかと、感じています。


バムとケロのもりのこや
島田 ゆか(著)
文溪堂 (2011/01)
風戸紗帆(かざと さほ)
京都精華大学人文学部3年生(2014年4月に3年生になりました。)
文章を書くのが好き。柔道初段を持っている。ちなみに得意技は一本背負い。