アサダワタル 日常再編集のための発明ノート

現実と虚構の狭間に「広告」を。家具量販店をスタジオにしたドラマ制作。

寒竹泉美の月めくり本

弥生本 :人生も仕事も変える「対話力」~日本人に闘うディベートはいらない~

野村雅夫 フィルム探偵捜査手帳

言葉の力を可視化する稀有な記録 ~ドストエフスキーと愛に生きる~

真子 レシピでつながる世界の景色

おりがみパンケーキ(タスマニア)

風戸紗帆 建築素人のデザイン体験記

シェアハウスに住み始めるの巻

インタビュー 南里沙 さん

(聞き手・進行 牧尾晴喜)

ロマチックハーモニカ奏者としてコンサートやライブ、さらにはTV番組などメディアへの楽曲提供や演奏を通じて国内外で注目を集めている、南里沙さん。彼女に、クロマチックハーモニカという楽器の可能性や今後の活動についてうかがった。

-------まずは「クロマチックハーモニカ」についてお尋ねします。どのようなハーモニカなんでしょうか?
南: クロマチックハーモニカは、楽器の右側にスライドレバーがついていて、これを押すとシャープ、つまり半音上の音がでる仕組みになっています。「クロマチック」は半音階という意味で、このハーモニカ1本で ピアノの白鍵・黒鍵全ての音を出す事ができ、1つの穴で4つの音が出ます。たとえば5番の穴を吹くと「ド」、吸うと「レ」の音がなり、それぞれレバーを押して半音上の音がなります。私の使用しているクロマチックハーモニカは音域が広く4オクターブと2音の音域が出す事が出来るので、どんな曲でも全部一本で演奏できてしまうのが特徴です。

------クロマチックハーモニカで演奏するのに向いている曲などはありますか?
南: ジャンルについてはよく聞かれますが、ジャズはもちろん、クラシック、ロック、ポップス、唱歌、そして演歌まで……!ジャンルを選ばないところがこのハーモニカの魅力でもあります。いろんなジャンルの曲を演奏できるので、あまりジャンルにとらわれずに素敵な曲を演奏していきたいと思っています。

------メジャーデビューアルバム『Mint Tea』では、表題曲は書き下ろしのオリジナルでしたが、それ以外では、グレン・ミラーからカーペンターズ、さらにはジャニス・ジョプリンまでカバーされています。全体の曲の選定では、どういったことを意識されましたか?
南: 大学ではオーボエを専攻していたので、どうしてもクラシックというジャンルに偏って音楽を聴いていたところもありましたが、今回のアルバムで、初めてチャレンジしたのがロック、ジャニスジョップリンのMove Overでした。ハーモニカでロック……自分で言うのもおかしいのですが、めちゃかっこいいです(笑)!今回のアルバムのレコーディングを通して、これからも色々なジャンルに挑戦して、ハーモニカそのものの可能性を広げていかなければと改めて思いました。

------ライブやコンサートなどさまざまな舞台で演奏されていますが、ハーモニカという楽器で苦労されるのはどういう点ですか?
南: ひとつは、クロマチックハーモニカという楽器自体の可能性が、まだそれほど知られていないという部分です。実際に一度聴くと、様々な可能性を感じとって頂けることが多いです。クロマチックハーモニカを広げていく為に、自分からどんどんとアクションを起こしていく必要があります。
 そして、ハーモニカという楽器は音量の小さい楽器です。会場の広さに関係なく、少人数で聴いて頂く時でも音響が大切です。大きな音を出す為でなく、pp(ピアニシモ)の表現をお客様に届ける為に。しかし、他の楽器に比べるとスペース的な問題はなく、私一人、立てる場所があればどんな場所でも演奏が可能です。小さなカフェから何千人という規模のホールでも、マイク一本あれば演奏できてしまうという点では最高の楽器です。

------オーケストラと一緒に演奏するとなると、たとえばどういった曲を演奏されますか?ハーモニカの聴かせ所がある楽曲って少ない気がするんですが。
南: クロマチックハーモニカの為のコンチェルトを丸山和範先生に作曲して頂き、2013の1月にブルガリアでブルガリア国立ソフィアフィルハーモニーのオーケストラの皆さんと世界初演させて頂きました。これも私の中では印象深い経験で、ハーモニカが楽器として認められた瞬間と感じました。

------子どもの頃はどんな感じでしたか?
南: 子どもの頃は、ピアノを習い、コンクールや発表会を楽しみながら続けていました。私が小学校1年生のときに阪神淡路大震災が起こり、オーケストラの方たちがボランティアで演奏に来て下さいました。その時、飛びこんできた音色がオーボエでした。甘くとろけるような音色で……私とオーボエとの出会いです。

------大学時代にはオーボエを専攻されていた南さんが、どのようにしてクロマチックハーモニカと出会ったのかを教えてください。
南: オーボエはダブルリードの楽器で、自分でリードを削らなければなりません。部屋で一人「どう削ったらどんな音色になるのか」と常に研究する日々。インターネットで調べていた所、たまたまハーモニカのリードの削り方にたどり着きました。ハーモニカは一音一音に金属のリードがついていて、それが振動して音がなります。当時はハーモニカがリード楽器ということも知りませんでした。実際の音色は、懐かしいハーモニカの音色に、新しい響きがプラスされ、管楽器のような、弦楽器のような……。私がイメージしていたハーモニカの音色とは違い、衝撃的な出会いでした。

------他の楽器を経験したことは、いまのハーモニカの演奏にも活きていますか?
南: ピアノとオーボエが私の中になければ、クロマチックハーモニカに出会っていなかったと思います。仮に出会っていたとしても、今の私の演奏とは随分と違うものになっていたでしょう。技術的な部分では、オーボエのビブラートのかけ方や、丹田の使い方なども、今のハーモニカに役立っています。オーケストラの中でオーボエを演奏していたという経験は、今、ソリストとしてオーケストラの中心に立つ私にとって大きいです。

------今後のビジョンというか、どんな演奏をしていきたいとか、どんな曲を届けていきたいとか、そういうことがありましたら。
南: 最近はホールで沢山の人に向けての演奏が増えてきていますが、一人一人の心に届くような演奏をいつも心がけています。クロマチックハーモニカの魅力を一人でも多くの人にお届けできるよう、これからも活動していきたいと思っています。



Mint Tea
音楽CD、南里沙
キングレコード (2013/5/22)
 
3月15日(土) 滋賀・東日本大震災復興支援コンサート~心をつないで 滋賀から東北へ~ 場所:滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール
2014年3月15日(土)
1000円(コンサートの売上は、「宮城県南三陸町社会福祉協議会」様に送られます。)
出演:南里沙(harmonica)、藤谷一郎(b)、渡辺具義(g)
 
平成26年 大阪府「春の全国交通安全運動」
4月6日(日)~15日(火)が実施されます。
期間中は、大阪府内の大型ビジョンや、ポスター、回覧板などで、南里沙が交通安全を呼びかけます!大阪に無事故0の輪をつくりましょう!
 
昨年に続き、2014年4月にブルガリア国立ソフィアフィルハーモニーと共演予定。
 
5月10日(土) 西宮の白鷹 禄水苑 宮水ホール コンサート 2014年5月10日(土) 白鷹禄水苑2階宮水ホール
14:30開場 15:00開演
一般前売り 3500円、当日4000円
ご予約・お問い合わせは Tel 0798-39-0235 (白鷹 禄水苑)(11:00~19:00、1・3水曜定休)
 
南里沙(みなみ りさ)
クロマチックハーモニカ奏者。
神戸女学院大学音楽学部音楽学科オーボエ専攻卒業。3歳からピアノを始め、故・秋谷和子氏に師事。兵庫県ピアノ学生コンクール、ヤマハP.T.C.コンクールなど入賞多数。12歳からオーボエを岩永健三氏に師事。
大学在学中にクロマチックハーモニカに出会い、徳永延生氏に師事。2010年F.I.H.日本ハーモニカコンクール総合グランプリ受賞、アジア太平洋ハーモニカ大会にて優勝など入賞多数。
2011年、国・上海音楽庁での演奏、2012年ウクライナINSO新交響楽団に招聘されてウクライナ・リボフで演奏など、海外での演奏も多数。NHKドラマ「希望の花」など多数の劇伴に参加。クロマチックハーモニカの普及に貢献している。
 

現実と虚構の狭間に「広告」を。家具量販店をスタジオにしたドラマ制作。

日久しぶりに近所の家具量販店に行き買物をした。お目当ては収納ケースだけだったので特に家具らしいものは見ていないのだが、5年ほど前に話題になった「IKEA Heights」というプロジェクトについて思い出した。数名のクリエイターがカリフォルニア州バーバンク市のIKEAの店内をルームセットに見立てて、勝手にベタな昼ドラのような番組を撮影するというもの。シリーズ化され、寝室やキッチンでのシーン、オフィスで働いているシーンなど、すべてIKEAの家具を使ってこっそり制作しているその馬鹿さ加減と「日常をこんな風に表現へと編集できるんだ!」という知恵に、当時関心を示したのだ。実は僕の母親の実家は、堺の商店街の家具屋である。子ども頃はよく従兄弟たちと、そこで即興劇のようなことや、かくれんぼをして遊んだものだ。例えば、僕がベッドに寝転んで死体のふりをして、7つ離れた従兄弟が刑事の役で「被害者の殺害時刻は……」みたいなことをするわけだ。なんせここには色んな妄想のファミリーストーリーが自然と掻き立てられるような環境が整っているわけだから。
 まぁ、「IKEA Heights」にしても、僕の少年時代の家具屋ドラマ体験にしても、店にしてみればもちろん迷惑な話であろう。僕なんて売り物の高級なフランスベッドのロケハン(?)に余念がなかったので、商品としてはだいぶ痛めてしまったかもしれません……(ごめん、天国のお祖母ちゃん)。でも、もしこの行為が売り上げに繋がるんだったら店側としても、ドラマの「制作」に協力してくれる可能性はあるんじゃなかろうか。それにはそのドラマ自体が広告的に価値を持つ必要があろう。例えば、映画「トゥルーマンショー」(1998 米国)では、ジム・キャリーが演じるトゥルーマン・バーバンクの人生が生まれた頃からすべて「リアリティ番組」として24時間撮影放送されているという設定なのだが、ここで様々な「広告」が挟まれる。トゥルーマンの妻メリルがいま使っている草刈機や万能ナイフなどを日常会話の中でさりげなく視聴者に向けて宣伝したり、ある日、ココアの宣伝を不自然にやりすぎて、トゥルーマンにその言動を疑われてしまうシーンがあったり。こういうのを、広告用語では「プロダクトプレイスメント」というらしいのだが。
 さて、そこで今回の発明。IKEAのような家具量販店をドラマのスタジオとして本格的にテレビ局やプロダクションに提供し、そこで実際に撮影をしている様子自体を、買い物客に見せるというアイデアだ。例えば、僕の大好きな(でもちょいちょい不幸な役もやる)西田尚美がそのスタジオに訪れて、ベッドの上で血まみれになって倒れている。背中に突き刺さったナイフ。そしてその横には、犯人が荒らしたと思わしき引き出し開けっぴろげの箪笥。これらすべての商品が「西田尚美が殺されたベッドと箪笥とナイフの三点セット」として「文脈」付きでその場で販売されるといったように。そして、もちろんテレビ放送される際もリモコンのデータボタンを押せば、IKEAのサイトにつながり購入OK。このプロジェクト全体のキャッチコピーは「あなたの日常空間に、"あのドラマ"を……!」だ。僕にしては珍しく商業寄りなネタを書いてしまったが、そのうちニトリあたりが乗り出してもおかしくない気がしているんだが……。


(イラスト:イシワタマリ)

アサダワタル
日常編集家/文筆と音楽とプロジェクト
1979年大阪生まれ。
様々な領域におけるコミュニティの常識をリミックス。
著書に「住み開き 家から始めるコミュニティ」(筑摩書房)等。ユニットSJQ(HEADZ)ドラム担当。
ウェブサイト

弥生本 :人生も仕事も変える「対話力」~日本人に闘うディベートはいらない~

近は、会って話して3分で、その人ともっと一緒にいたいかそうでないかが決まってしまう。キャッチボールでたとえると、一往復の会話分だ。わたしが投げる。それを相手が受け取って投げ返す。その受け取り方と投げ返し方ですべてが分かってしまう。そしてその直感は、あんまり外れない。
 一生懸命投げたのに受け取ってもらえなかったり、全然投げ返してこなかったりという時点で、あれ? と思う。そのまま会話を続けると、バッティングマシーンのようにひたすら球ばかり投げ続けてきたり、投げても投げても受け取ろうとしなかったり、変なところに投げ返して知らん顔してたりで、ぐったりする。もういいや、って、こりごりする。
 会話をちゃんとキャッチボールができる人って、なかなかいないものです。
 だからこそ、たまにきれいにキャッチボールできると、うっかり、きゅんってときめいてしまう。つまりですよ、気の利いた話なんてできなくても、面白いこと言えなくても、人見知りでも、ただしっかりと話を誠実に受け止めて正しく投げ返してくれるだけで、絶対にもてるのにと思うのです。
 というわけで、これはある意味究極のモテ指南本かもしれない。


人生も仕事も変える「対話力」 日本人に闘うディベートはいらない (講談社プラスアルファ新書)
小林 正弥 (著)
講談社 (2014/1/21)

 自分の主張を曲げず、相手を論破できるかどうかで勝ち負けを競うディベートは、それはそれで意義があるのかもしれないけれど、双方が自分の立場から動こうとせず、負けた方には嫌な気持ちが残り、勝った方は自分が正しかったと確認するだけだ。でも「対話」は時には相手の意見によって自分が変化することがある。変化してもいい。相手の話に耳を傾けたおかげで、思いこみや固定概念から離れて新しい世界が広がることもあり、発見や成長や感動がそこにある。
 世の中を見回してみると、不毛なディベートであふれている。お互いに相手の声が聞こえないくらいにわめきたてて、大声大会になっている。
 そんな言い合いは憎しみを呼ぶばかりだ。でも対話は違う。相手の立場を想像し、自分の心を開くことで対話が始まる。人と人が混じりあう意義はそこにあるのかもしれない。対話をせずに日々を過ごしているのは人生の豊かな果実の味わいを知らないということになるのかもしれない。

――生き生きとした対話には、一種の生命のようなものが感じられます。ひとりひとりの考えを超えて、対話が自らの精神をもって生成するように思われるのです。そこには、一種の対話の運動が生じているような気がします。そして、「この過程を通じて、自分の見識が高まったな」というような感覚を体験できれば、理想的な対話の感覚がわかると思います。
(本文より抜粋)

 対話とは、目の前にいる相手をいつくしみ相手に興味を持ち、差し出されたものを大切に受け取り、魂をこめてそれに応えることなのかもしれない、とこの本を読んで思いました。なんだかそれって、愛することに似てますね。対話が上手い人はきっと愛し方も上手いのでしょう。ほらほら、みなさん、幸せになりたきゃ対話力ですよ。女子力とか磨いている場合ではないんです。

寒竹泉美(かんちくいずみ) HP
小説家
京都在住。
家族のきずなを描くWEB小説「エンジェルホリデー」毎日連載中。
デビュー作「月野さんのギター」の映画化企画が進行中。

言葉の力を可視化する稀有な記録 ~ドストエフスキーと愛に生きる~

ぁ、私だ。今月はドキュメンタリーだ。被写体は齢80を過ぎたドイツに暮らす老婆。『罪と罰』を始め、次々とドストエフスキーの難解な長編をドイツ語に翻訳し、作品に「新たな声を吹き込んだ」として、その功績はあちらの文学界で偉業と讃えられているスヴェトラーナ・ガイヤー…。こう書いたところで、あなたは興味を失うかもしれない。地味だなぁと。正直に言おう。翻訳に従事する私でさえ、さほど高ぶらないままに半信半疑で何となく観始めた。ところが、これが面白いのである。
 作品の柱は2本ある。まずはスヴェトラーナの暮らしぶり。日常的に行われる翻訳の作業そのものも、共同作業を取り入れていたり、音読が行われたりと私は感興をもよおしたが、多くの人がくすぐられるのは、むしろ彼女のウィットとユーモアに富んだ語り口だろう。小説と玉ねぎの関係。アイロンがけの極意。ふとしたタイミングで放たれる言葉のひとつひとつが、私のなけなしの知性を刺激した。彼女の生活には詩のようなリズムがあり、その行間には哲学が息づいている。自然と我々は思うことになる。彼女はどんな人生を歩んできたのだろうか。
 そこで2本目の柱だ。それは彼女を翻弄した苛烈なヨーロッパ現代史。ここがドキュメンタリーの妙なのだが、あるできごとをきっかけにして、彼女は予定していなかった(つまり劇映画のような台本にはない)旅に出ることになるのだ。スヴェトラーナという響きに、私は当初から違和感を感じていた。ドイツ人らしからぬ名だからだ。やはり彼女はウクライナの出身であった。では、なぜドイツ語への翻訳をしてきたのか。1923年生まれだから、多感な時代はスターリンの粛清や第二次大戦とちょうど重なる。その波乱をどうかいくぐったのか。映像は安易な再現などせずに、我々の想像力をうまく引き出しながら紡がれる。そして、ここでも言葉の力がまた浮き彫りになっていく。
 言葉は人や国を分断するものであると同時に、それらをつなぐものでもある。我々は残念ながらドイツ語で彼女の訳を読むことはできないが、この映画のおかげで、彼女の、いや、人間にとっての言葉の力について想いを巡らせることができる。それはあなたにとっても、とても貴重な時間となるに違いない。



『ドストエフスキーと愛に生きる』

全国で順次上映中。
関西では、3月29日からシネ・リーブル梅田、4月5日から京都シネマ、4月12日から神戸アートビレッジセンターにて公開。

監督・脚本:ヴァディム・イェンドレイコ
撮影:ニールス・ボルブリンカー、ステファン・クティー
録音:パトリック・ベッカー
編集:ギーゼラ・カストロナリ・イェンシュ
出演:スヴェトラーナ・ガイヤー、アンナ・ゲッテ、ハンナ・ハーゲン
原題:The Woman with The Five Elephants
2009年/スイス、ドイツ/ドイツ語、ロシア語/93分/カラー、モノクロ
配給:アップリンク


野村雅夫(のむら まさお)
ラジオDJ/翻訳家
ラジオやテレビでの音楽番組を担当する他、イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」代表を務め、小説や映画字幕の翻訳なども手がける。
FM802 (Ciao! MUSICA / Fri. 12:00-18:00)
Inter FM (Mondo Musica / Mon.-Thu. 18:00-20:00)
YTV (音楽ノチカラ / Wed. Midnight)

おりがみパンケーキ(タスマニア)

ェイドはいつも歌っていた。あくびをするのと同じくらい自然に歌う。片面が焼けたパンケーキに、きのことモッツアレラチーズ、オリーブオイルに漬けたセミドライトマトをのせる。具を挟むようにパンケーキを2つに折り曲げて余熱で温めながら彼女が口ずさむのは自作の曲、おりがみマスターだ。Origami Master fold me the way you please......

真子
スケッチ・ジャーナリスト
タスマニアと名古屋でデザインと建築を学ぶ。専門はグリーンアーキテクチャー、療養環境。国内外の町や森をスケッチブック片手に歩き、絵と言葉で記録している。
ウェブサイト

シェアハウスに住み始めるの巻

つは私、「シェアハウス」に住んでいます!愛媛から京都に進学が決まったのを機に、一人暮らしを始めました。大学が決まってから、どんな家がいいかな~とネットを駆使して調べる日々。そんなとき、関西在住でデザイン関係の仕事をしている叔父から「こんな家あるけど、どう?」という一通のメールが届きました。そうして出会ったのが今の家であるシェアハウスです。
 私がシェアハウスに抱いていたのは、一軒家でキッチンやお風呂が共同、リビングを皆で共有し、個人の部屋があるという印象でした。しかしこのシェアハウスは、マンションのようなアパートのような4F建ての造りになっていてキッチンは2つあり、皆で共有するようなリビングの代わりに、「みんなの部屋」という部屋がありました。思っていたシェアハウスとは少し違いましたが、初めての一人暮らしにこの家を決めました。
 また、この家は非常にユニークで、ツイッターに「部屋の改装自由」と書かれてあったそうです。そこで、叔父に頼んで部屋を改装してもらうことにしました。私が注文したのは畳をフローリングにしてほしいというだけでしたが、その他にも天井をきれいに塗ってくれたり棚をつくってくれたりして、改装自体にはあまり興味がなかったのでその全てを任せっきりでしたが、結果いい感じになりました。(自分が住むにも関わらず、本当に適当です(笑)。)改装された部屋に足を踏み入れたときは、今からこの部屋に住めるんだという嬉しさがこみ上げてきて、どんな家具を置こうかな~とかいろんな妄想を巡らせたりしたものです。
 ……と、今回はシェアハウスに住み始めるまでのお話で、具体的な体験については機会を改めて書きたいとおもいます。

風戸紗帆(かざと さほ)
京都精華大学人文学部2年生(2014年4月からは3年生の予定。)
文章を書くのが好き。柔道初段を持っている。ちなみに得意技は一本背負い。