アサダワタル 日常再編集のための発明ノートラジコンのデモンストレーションで"デモ"活動 ~脱原発でも春闘でもTPP反対でも、デモデモデモ…~ |
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ミホシ 古典×耽美八百比丘尼 |
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野村雅夫 フィルム探偵捜査手帳アート・ロード・ムービー ~ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの~ |
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小林哲朗 モトクラ!ディスカバリー白い廃校 |
(聞き手・進行 牧尾晴喜)
紙芝居の弁士として、国内外の公演で話題をよんでいる、伊舞なおみさん。彼女に、紙芝居弁士としての活動についてうかがった。
-------紙芝居ユニット『スパイスアーサー702』の弁士としてご活躍です。まずは、紙芝居を始められた経緯や、どういった場でされているのかを教えていただけますか?
伊舞: もともと、絵描きのひとたちと一緒に、自分たちが楽しむために紙芝居を始めたんです。いまも、呼ばれた場所に合わせて作品を選んだりはするけれど、自分たちが楽しいと思うことをやっています。「紙芝居」と聞くと子どもをイメージされるかもしれませんが、必ずしも子ども向けにはつくっていません。もちろん、子どもに見てもらってもいいんですが。
先日は新宿ロフトのライブハウスで紙芝居をさせてもらいました。会場としては、絵が見えるくらいの温かい距離感がいいですね。ありがたいことに大きな会場に呼んでいただけたりすると、場合によってはスクリーンを使わせてもらうこともあります。
全部で20数作品、短くて勢いのあるものから、じっくり聞いていただきたいものまであります。その中から、わたしたちだけのイベントのときは数本を、イベントなどに呼んでいただくときは1、2本を選びます。文楽を紙芝居にしているものもあって、勝手に「紙文楽」と呼んでいます。ほかの紙芝居とは絵柄が違って、より「アート」な感じですが、子どもたちはかえって面白がってくれています。
------(めくった紙を投げる様子から)「空飛ぶ紙芝居」と呼ばれています。
伊舞:べつに「飛ばそう」とか「投げよう」と思っていたわけではないんです(笑)。絵をたくさん見てもらいたくて、「絵の見せ方」に意識が向いていました。たとえば、襖みたいに横に開いてみたり、積み上げていったり。そして、速くめくることで絵が変わっていくんです。速めくりだけではなく、いつの間にか「空飛ぶ」とも呼ばれるようになって、これが一番定着しましたね。
------弁士として心がけておられることはありますか?DJや役者と同じく「声を使う」お仕事ですが、ずいぶんと違いそうです。
伊舞: 最初はアニメの声優のように、「隠れて声を出す」ということを意識していました。でも、演奏や弁士としてのわたしも含め、全体の雰囲気をまとめて楽しんでもらっていることが分かってきて、途中で変わりました。派手なことはしませんが、いまは、影であり共演者でもあるという気持ちです。
紙芝居ということを特に意識して使い分けているわけではないですが、気持ちのうえでどちらかというとお芝居の仕事に近いですね。作品をしっかり伝えたいな、と。
------全作品の作・演出をリーダー(ピョンキーさん)がされているんですね。
伊舞: はい、リーダーがすべての紙芝居をつくっています。彼は映画を撮っていたこともあって、絵コンテをきっちりと描くところからスタートするんです。そしてストーリーが仕上がってから絵をいっきに描きます。同時に、セリフの部分が台本になります。それから、トランペッター(クイックLEEゆうたさん)に対して、こんな音がここで欲しい、といったリクエストがでます。トランペッターなんですが、作品によっては、チャンバラの音を鳴らしたり、三味線を弾くこともあります(笑)。あと、ホラ貝なんかもあって、海外でもウケましたね。
------海外では英語で紙芝居をされるわけですが、どのような苦労がありますか?
伊舞: 紙芝居のなかのセリフ自体は変わらないんですが、まず英語に訳す作業がでてきます。そこで、ちょっとしたニュアンスの問題が出てきたりします。
たとえば、これは日本語での話ですが、『おばあちゃんの木炭バス』という実話をベースにした作品があります。最初は大阪弁でやっていたんですが、じっさいは富山県の氷見の話なので、勉強して現地の方言に変えたんです。すると、ストーリー自体はまったく同じでも、浮かんでくるおばあちゃんの人柄が変わりました。こういうことは英語でもやはりあって、伝える内容は同じでも、表現ひとつでイメージが変わってきます。わたしは言葉も方言も好きなので、こういう部分はとても面白いですね。
------国によってリアクションも違いそうです。
伊舞: そうですね。「え、そこがおもしろいの?」と驚くこともよくあります。インドではお客さんがとても自由で、好き勝手に喋っていたりするんですね。集中していないのかなと心配しましたが、じつはすごく楽しんでくれていました。映画でもそうらしいですけれど、観ながら喋ったり歌ったり踊ったり、という感じのようです。
それに比べると、ドイツ、イギリスなんかだと比較的落ち着いて観てもらえます。ヨーロッパでは、日本文化への関心が高いからだとおもいますが、紙芝居の絵だけでも「MANGA」として、とても喜んでもらえました。大正時代くらいの空気感が出たらうれしいなあと袴姿で弁士をしていますが、そういった衣装にも興味をもっていただけます。日本の伝統的なものを勉強するのはもちろんですけれど、こういう新しい試みをみるのも楽しいようです。
------ラジオ番組『伊舞なおみのみんながメダリスト』でも、役者としてのお仕事とつながるコーナーがありますね。
伊舞: 番組は今年で7年目になるんですが、ゆったり喋って音楽をかけて、という昔ながらの構成を軸にしています。名物的なコーナーとして、ひとつはラジオドラマ。最初は夏休みの特別企画だったんですが、喜んでいただけたので、今はほぼ毎週しています。役者をやりながらのDJですし、『丸太町日曜劇場』と題して楽しんでいます。それと、月に一度だけ、番組で生まれたハンドウォーマーズというバンドがリスナーさんからのメッセージに合わせて、放送時間中に応援ソングのような歌をつくって演奏までするという、いわゆる「無茶ぶり」な企画もあります(笑)。
------子どもの頃から創作や演じることが好きでしたか?
伊舞: 小さいときから本を読むのが好きで、最初は話を書きたいと思っていました。でも中学校に文芸部がなくて演劇部に入り、大学までずっと演劇部です。在学中にテレビなどに出たりもしましたが、色々あって一般的な就職をしました。それから結婚して子どもが生まれて、会社をいちどやめないといけなくなったその日に、昔のディレクターから連絡があったんです。「番組構成など裏方を手伝ってほしい」と。それで少し仕事をしているうちに、「ちょっとこれ読んで」みたいな感じでいまの仕事につながっていきました。それからはあっという間ですね。業界に復帰するかどうか、といった感じで身構えてしまっていたら、きっと戻ってこなかったと思います。ご縁です。ちょっとずつ手伝っているうちにやっぱりこの仕事が好きなんだな、と自分で感じました。
------今後のビジョンを教えてください。
伊舞: あれもこれも、とアグレッシブになっている時期もありました。でもいまは、ドカーンと花を咲かせるよりも、自分の表現方法なんかも含めて、今させてもらっていることを丁寧にしていきたいな、と考えています。もう一度初心にかえって、いろんなひとにちょっとずつ出会いながら、伝えることを、自分のなかでテーマにしたいですね。
2013年3月1日 大阪にて
紙芝居ユニット『スパイスアーサー702』 公演風景より |
ドイツ・フランクフルト公演より photo by Martin |
ドイツ・フランクフルト公演より photo by Martin |
ラジオ番組『伊舞なおみのみんながメダリスト』 KBS京都ラジオ 毎週日曜日 午後2時~5時15分 |
『伊舞なおみのみんながメダリスト』収録中の風景から バンド(ハンドウォーマーズ)演奏中 |
伊舞 なおみ(いまい なおみ) 紙芝居弁士。ラジオDJ。兵庫県生まれ。 劇団パロディフライ、昭和プロダクション所属。ラジオDJ、役者としての活動と並行して、空飛ぶ紙芝居集団「スパイスアーサー702」の弁士として国内外で活躍。 |
『3.11』以後、巷では様々なタイプのデモ活動が注目を集めている。首都圏反原発連合による「金曜官邸前」の大規模なデモから、高円寺のリサイクルショップ店「素人の乱」などが中心となって行うサウンドデモ「原発やめろデモ!!!!!」など。大阪では、友人のミュージシャン達が「セルフ祭り」と題した、日本の社会に祭りをおこすことと脱原発を兼ねた、危なっかしくも笑えるデモを展開してたり。また、『デモいこ!』(TwitNoNukes 編 / 河出書房)といった、これまでデモや政治活動とは無縁だった人たちが"気軽に楽しく"、でも"真剣に"、デモを行うための実践的なガイドブックまで出版される世の中になってきた(表紙のイラストがこれまでの怖いデモのイメージではなく、お洒落でかわいい…)。
一方、「デモってそもそもどういう意味だったっけ?」って改めて考えてみると、まぁ「デモンストレーション(demonstration)」の略語なわけですが、国語辞典『大辞林』を引きますと
1 抗議や要求の主張を掲げて集会や行進を行い、団結の威力を示すこと。示威運動。デモ。
2 宣伝のために実演すること。
3 競技大会で、正式の競技種目以外に公開される競技・演技。公開演技。
とあるわけです。
さて、ある日のこと。たまたまネットの記事で、新型ラジコンの展示会の様子が取材されていて、技術スタッフや一般参加者による体験操縦が行われているのを見かけたんです。そこには先ほどの「2」の意味で「デモンストレーション開催中」って書かれているわけですよね。
そこで直感で繋がりました。このデモンストレーションを、国会議事堂周辺を舞台にして、ラジコンに旗も付けて、ちゃんと警察に道路使用許可申請もして、ラジコンを使った"脱原発デモ"を仕掛けるのはどうだろうかと。日本ラジコン模型工業会などとタッグを組み"ラジコンホビーデモショー"も兼ね備え、雨にも風にも負けず軽やかに動き回る、高度な日本のラジコン技術の賜物が、結果的にテレビ中継にも映り、ラジコンファンの裾野も広がればなお良し(でも、周りに人が多すぎるとそもそもラジコン自体が見えない!)。あるいは、大きな政治運動でなくとも、例えばラジコン業界に関わる労働者たちがラジコンを通じて「ベア」を要求するとか。もっと具体的な提案としては、アベノミクス以降、弾みが付きそうなTPP交渉参加において、アメリカから「日本の軽自動車の税制優遇って"非関税障壁"なんじゃないの!?」って突きつけられていることに対して、軽自動車産業界が、その国民生活と密着した素晴らしきコンパクトさの"表象"としてラジコンを使いこなし、「そんなことならTPP反対!」と言いながら猛烈な"渋滞"デモを巻き起こすとか…。デモの種類によっては車型だけでなく、飛行型のラジコンもあればなお広がりができて見ていても楽しいし、夢があるデモをクリエーションできそうだ。
(イラスト:イシワタマリ) |
アサダワタル(あさだ・わたる) 日常編集家/文筆と音楽とプロジェクト 1979年大阪生まれ。 様々な領域におけるコミュニティの常識をリミックス。 著書に「住み開き 家から始めるコミュニティ」(筑摩書房)等。ユニットSJQ(HEADZ)ドラム担当。 ウェブサイト |
父さまに内緒でこっそりと食べた。
それはとてもとても甘美なお味で…。
忘れられないあのお肉。
内緒で食べたものだから何の肉かも聞くことさえできない。
年をとらない私。皺が増えていく旦那さまたち。
そして私をおいて皆、居なくなってしまった。
まさかあれが人魚の肉だなんて。
ミホシ イラストレーター 岡山県生まれ、京都市在住。イラストレーターとして京都を拠点に活動中。 抒情的なイラストを中心に、紙媒体・モバイルコンテンツなどのイラスト制作に携わる。 |
やあ、私だ。2010年11月にこの欄で取り上げたドキュメンタリー『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』を覚えているだろうか。郵便局員と図書館司書という元公務員の老夫婦が、若い頃から自分たちの給料の範囲で買い集めてきた膨大なアートコレクションを、アメリカ国立美術館に寄贈するまでを追ったもの。半世紀にわたってつましい暮らしを続けてきたニューヨークの1LDKのマンションには、国の手にも余る5000点もの作品が密林のごとくひしめいていた。売れば巨万の富に化けるコレクションが、国立美術館経由で全米50州の50の美術館へとこれから巣立っていくことになる。そんな情報が終盤に提示されていた。日本人女性がメガホンを取ったこの映画は、地味ながら草の根の支持を集め、世界各国で異例のヒットを記録し、私にも強い印象を残した。
あれから2年余り。続編が届いた。好評を受けてから製作するような、「もう一儲け」を企むものでないことは知っていたものの、私は一抹の不安を覚えていた。全米に散っていく作品を追っても、そこに前回のようなドラマは生まれないのではないか。
杞憂だった。
素材は、大きく分けて3種類。50x50(フィフティー・バイ・フィフティー)と名付けられた寄贈プロジェクトがそれぞれの美術館に受け渡され、特別展が開催されたりする受容の様子。アーティストへのインタビュー。夫婦の現在の姿。編集方針を決めるのに紆余曲折があったようだが、数珠つなぎで一本のストーリーラインを紡ぐのではなく、複数のモチーフを小気味良いリズムで並行して見せながら、「平面的に編む」手法を監督は選択した。複眼的な視点を通して「アートと人間の関係」という大きなテーマが浮かび上がる仕掛けだ。前回の成功に酔うことなくメソッドを転換できたことが勝因だろう。
昨年の夏。夫のハーブが他界した。既に編集は終わりに差し掛かっていたが、追加撮影が行われた。結果としてさり気なく添えられたシーンが、ふたりとふたりが集めた作品が辿ってきた「情熱と愛情と分かち合い」の道程に花を添える。ひとりになったドロシーの行動が実に示唆に富んでいて、ドキュメンタリーの余韻としてこの上ない。
作品の評価とは関わりのないことだが、プロデューサーも兼ねる佐々木監督が、今回はクラウドファンディングという「少額を大勢から」募る資金集めによって完成にこぎつけたことを付け加えておきたい。狭い部屋から全米にアートが拡散して、人々の身近なものになっていく様子を描いた映画が、人々のワンコインからの支えによって製作されたことは面白い符号だし、何よりクラウドファンディングが映画製作にも有効だと証明できたことは快挙で、今後の映画作りに大きな影響を与えることは間違いない。
(C)2013 Fine Line Media, Inc. All Rights Reserved. 『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』 監督・プロデューサー:佐々木芽生 出演:ハーバート&ドロシー・ボーゲル、リチャード・タトル、クリスト、ロバート・バリー、パット・ステア、マーク・コスタビ、チャールズ・クロフ他 2013年/アメリカ/87分/カラー/英語/デジタル上映 3月30日(土)より新宿ピカデリー、東京都写真美術館、なんばパークスシネマ、梅田ガーデンシネマ他、全国順次ロードショー。 |
野村雅夫(のむら・まさお) ラジオDJ。翻訳家 FM802でROCK KIDS 802(毎週月曜日21-24時)を担当。イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」代表を務め、小説や映画字幕の翻訳なども手がける。 |
中国地方のとある地域に、廃校になった小学校がある。この小学校は木造箇所が多く、壁や柱などが白く塗られているのが特徴だ。またうっすらとカーブを描く天井も美しい。ところどころツタの侵入は見られるが、建物自体はまだ使えそうなほどしっかり建っている。
撮影日は小雨。窓からは柔らかい光が入り、廃校としての寂しさを演出する一助となっている。
小林哲朗(こばやし・てつろう) 写真家 廃墟、工場、地下、巨大建造物など身近に潜む異空間を主に撮影。廃墟ディスカバリー 他3 冊の写真集を出版。 |
第1回書家川尾朋子 |
第2回字幕翻訳家伊原奈津子 |
第3回紙芝居弁士/ラジオDJ伊舞なおみ |
第1回講談師旭堂南陽 |
第2回フォトグラファー東野翠れん |
第3回同時通訳者関谷英里子 |
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第4回働き方研究家西村佳哲 |
第5回編集者藤本智士 |
第6回日常編集家アサダワタル |
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第7回建築家ユニットstudio velocity |
第8回劇作家/小説家本谷有希子 |
第9回アーティスト林ナツミ |
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第10回プロデューサー山納洋 |
第11回インテリアデザイナー玉井恵里子 |
第12回ライティングデザイナー家元あき |