アサダワタル 日常再編集のための発明ノート

老人ホーム入居者による"バンド"&"レーベル"結成

ミホシ 古典×耽美

狼と娘

野村雅夫 フィルム探偵捜査手帳

三"時"元の発明 ~フラッシュバックメモリーズ3D~

小林哲朗 モトクラ!ディスカバリー

蒸気のある光景

インタビュー 伊原奈津子 さん

(聞き手・進行 牧尾晴喜)

画の字幕翻訳家として、『きみに読む物語』、『エミリー・ローズ』、『ブッシュ』など様々なジャンルの話題作を手がけている、伊原奈津子さん。彼女に、マリリン・モンローを題材にした新作のドキュメンタリー映画や、字幕制作に対する姿勢についてうかがった。

-------今秋公開予定の『LOVE, MARILYN(原題)』のお話からうかがいます。マリリン・モンローを題材にしたドキュメンタリーで、ユマ・サーマンやグレン・クローズなどが出演する映画とのことですが、どのような内容でしょうか。
伊原: マリリンが書いた詩、メモ、手紙などが新たに見つかったところから物語が始まります。ユマ・サーマンたちはナレーターのような役割で、マリリンが書いたものを読んだり、モノローグのような形で語ったりします。また、過去にマリリンと交流があった人たちのインタビュー映像や当時のニュース映像なども出てきます。マリリンが1962年に亡くなってから50年が経ち、彼女自身の声が謎を深めている、というちょっと興味深い出だしのドキュメンタリーです。

------映画字幕では、それぞれのジャンルに特有の面白さや苦労があると思いますが、「ドキュメンタリー」ではどうですか?
伊原: ドキュメンタリーでは、調べものがとても多いです。たとえば、今回の映画にも、数あるマリリンに関する著述の中から抜粋された文章や、出演作の映像が使われています。著述に関しては手に入るものはできるだけ読むんですが、作業日程から限界もあります。たとえば、映画1本の字幕翻訳は10日くらいで仕上げないといけないんですが、発注いただく時には「作業用の素材はあるので、すぐに字幕の作業に入れますか?」という場合も多いんです。資料を手配して、入手して、どこまで読めるか、といったスケジュールの調整も難しいところです。
 もうひとつは、字幕の文字数のことです。字幕の文字数はセリフの場合、基本的には1秒4文字、と決まっています。ですがドキュメンタリー映画では、ナレーションやインタビューの他、話者の名前やインサートにも字幕をつけなければならず、文字情報が氾濫する場合が多いので、他のジャンルの映画よりも文字数を減らして翻訳するように心がけています。そのままの字幕翻訳では、文字ばかりを読んで映像に目がいかなくなってしまうんです。たとえば、セリフの長さにあわせて普通なら20文字で訳すところを、ドキュメンタリーでは15~16文字で訳す努力をする、といった感じです。

------恋愛映画からホラー、法廷や政治ものまで、幅広く手がけておられます。どんなジャンルの映画がお好きですか?
伊原: "ラクだ"という意味で好きな仕事と、やっていて楽しい仕事は違いますね(笑)。たとえば、たぶん字幕翻訳者なら皆さん同じかと思いますが、字幕をつけるのがラクかラクじゃないかだけの話をすると、セリフが少ないホラー系やカンフーなどのアクション系映画は物語も単純だったりしてラクです。でも、字幕をつけているときは「あ~地獄だ」と思うくらい大変でも(笑)、ドラマ性のある、あるいは自分が感情移入できるような作品の字幕作業は楽しいですよね。翻訳者の欲目もありますが、自分が手がけた映画って全部、いいところが見えてきて好きになります。25年くらい仕事をしていますけれど、翻訳を終えたあとまで、なんて下らない意味のない作品なんだ、と思うような映画はほとんどないですね。

------字幕制作を手がけた映画には愛着がわくものなんですね。
伊原: 主人公になっちゃってる気がしますね。演じてるっていうのもおかしいですけれど、作品のなかに主役や脇役として入ってしまっている感じです。セリフを訳していて、ふと気づくと眉間にしわが寄っていたり涙があふれていたり口元がゆるんでいたり。不思議の国のアリスじゃないですけれど、この世界に入りこむ楽しさがあります。現実逃避の手段というか(笑)。

------伊原さんは「吹き替え翻訳」も手がけておられますが、「字幕翻訳」とはずいぶん違うものでしょうか?
伊原: 字幕とは全然違いますね。1本の映画を、吹き替えと字幕の両方で、という依頼をいただくこともありますが、単語を調べる手間が1本分ということ以外は、まったく別の作業です。
 吹き替え翻訳では、映像を流しながら、実際に声優のように話しながら台本をつくっていくんです。字幕と違って文字数の制限はないんですが、吹き替えの声優のことを考えながら訳していかないといけない。翻訳が長すぎると、声優がすごく早口で喋らないといけないし、逆に短すぎると、スクリーンの俳優の口だけがパクパク動いている状態になってしまいます。老人なら老人らしくゆったりと、夫婦げんかのシーンは早口でまくしたてて、すべて自分で演じながら翻訳しセリフをつくっていきます。そうやって全部喋っていくので、仕事場の外で聞いてると、何をしてるんだろう?って思われますよ。恥ずかしいので見せられない作業です(笑)。そうやってセリフがピタッとはまると、よし、これだ!って。

------最初から「吹き替え翻訳」と「字幕翻訳」の両方をされていたんでしょうか?
伊原: わたしは両方していますが、独立したての頃は吹き替えが多かったです。吹き替え翻訳に比べると、字幕翻訳をしたいという方がすごく多いんですよ。字幕専門の戸田奈津子さんの影響が大きかったんだと思います。また、最近は恵まれてきましたけれど、作業時間と報酬のバランスなど、昔の吹き替えは大変なことも多かったんです。
 わたしが独立したてのころは字幕翻訳の仕事には入っていく隙がなくて、吹き替えの方では仕事がたくさんある状態でした。海外ドラマのハシリ、たとえば『Xファイル』や『メルローズ・プレイス』などが入ってきている時期だったんです。

------そういった業界の潮流はもちろん、翻訳の内容も、時代によって変わる部分があるでしょうね。
伊原: 最近では、活字自体を読む習慣がないというひとも増えているということで、会社によっては、「この漢字はダメ、あの漢字はダメ」というところもあるようです。でも、字幕には句読点がないですし、ある程度は漢字が入っていないと読みづらいので、漢字を減らすことにも限度はあると思いますね。

------「1つの言語を別の言語に置き換えるという作業は、文化の違いを考えると不自然なことではある」(『字幕翻訳者が選ぶオールタイム外国映画ベストテン』より)という言葉は、まさにその通りだと思います。それを克服するために心がけておられることは?
伊原: いつもアンテナを張り巡らせようとすること、でしょうか。いつも意識することで、思わぬところから思わぬものが出てくることがあるんです。たまたま目を通した新聞や雑誌に、ちょうど欲しかった言葉が載っていたりして「どうしてこんなにいいタイミングで?」と思うことがあります。

------映画への興味は子どもの頃から強かったのでしょうか?
伊原: 映画はもともと好きで、ディズニーアニメをはじめ、いろいろと観にいきました。

------その後、留学されたときには映画関係のお仕事に就きたいと思っておられましたか?
伊原: 最初は、できれば映画をつくりたいと思っていたんです。アメリカでもドラマの勉強をしました。地方のテレビ局でインターンシップをしたり、労働許可を取っていたので障害者施設でバイトしたり、コンビニの副店長をしたりと、地元の子みたいな顔をしていろいろと働きました(笑)。
 一度も帰国することなくアメリカに5年いたのですが、いろいろな事情で日本に帰ってくることになりました。なんとか映画につながっていたいと考えて、映画の字幕の仕事をしたいと思うようになったんですが、どうやってその仕事に就けるのかが分からない状況でした。
 チャンスを待ちながら、いろいろな仕事をしていました。日本テレビでADをして、英会話学校で教えて、高島屋で海外のデザイナーズブランドの商品を売って……。そんなときにワーナー・ブラザースで募集があって、応募をしたところ、採用になったんです。最初は製作部長秘書という肩書きでしたが、字幕の勉強がしたくて翻訳学校にも通っていました。入社当時は毎日深夜まで残業だったので、翻訳学校とは時間のやりくりをしながら。そうやっているうちに、上司が「ビデオの予告編の字幕でもやってみるか?」と声をかけてくれて、字幕の仕事への道が開けたんです。

------語学の情報誌『ALCOM WORLD』で『字幕翻訳 晴れときどきくもり』の連載をされています。トピック選びなど、どのようなことを意識されていますか?
伊原: 劇場作品を手がけたときは必ず取りあげています。最近は、ちょっと昔の映画になりますが『エミリー・ローズ』を取りあげ、差別用語に関係する字幕のエピソードについて書きました。難しいテーマですが、何かの機会に書きたいと思っていたんです。そういう題材にもチャレンジしたいなと思っています。

------今後のビジョンを教えてください。
伊原: いま、いろいろと変化の時代ではあるけれど、乗れる変化には乗っていくつもりです。たとえば字幕では、若い人たちは『SST』っていうパソコンソフトを使っていて、翻訳学校では、ほとんどこのソフトを使って授業しているようです。パソコンの画面上で、映像の上に字幕をのせながら作業ができるというソフトなんですが、私たちのようなちょっと古いタイプは、そういうソフトがなくても「頭の中で映像に字幕をのせられる」ことが強みな訳ですよ。そうやって仕事を進めてきましたから。でも、そういう元々の強みを持ったうえで、新しいソフトも使えるのであれば、さらに強みになるわけですよね。だから新しい技術も嫌がらず、乗れるものには乗っていく。ただし、邪道だと思うことには乗らず、選択をしながら頑張っていきたいですね。



2013年2月6日 大阪にて

『LOVE, MARILYN』(原題)より
2013年秋、公開予定     配給:株式会社ショウゲート
 
ボディ・ハント [DVD]
出演:ジェニファー・ローレンス、他
監督:マーク・トンデライ
製作:2012年
 
だれもがクジラを愛してる。 [DVD]
出演:ドリュー・バリモア、他
監督:ケン・クワピス
製作:2012年
 
TM & (c) Warner Bros. Entertainment Inc.

*リンク先はプレビュー動画の音声がでます。ご注意ください。
続ハリーズ・ロー 裏通り法律事務所

出演:キャシー・ベイツ、他
WOWOWにて放送中
(二)毎週月曜よる11:00
(字)毎週火曜深夜0:10
 
きみに読む物語 スタンダード・エディション [DVD]
出演:ライアン・ゴズリング、レイチェル・マクアダムス、他
監督:ニック・カサヴェテス
製作:2004年
 
エミリー・ローズ デラックス・コレクターズ・エディション [DVD] 出演:ジェニファー・カーペンター、他
監督:スコット・デリクソン
製作:2005年
 
ブッシュ [DVD]
出演:ジョシュ・ブローリン、他
監督:オリバー・ストーン
製作:2008年
 
字幕翻訳者が選ぶオールタイム外国映画ベストテン
(編集)映画翻訳家協会
ACクリエイト、2011年12月発売
 
アルコムワールド
書影は2013年3月号(2月配本)
詳細はこちら
 
伊原 奈津子(いはら なつこ)
字幕翻訳家。アメリカShorter College卒業。
ワーナー・ブラザースに入社後、字幕翻訳に携わる。現在は独立し、字幕翻訳、吹き替え翻訳の分野で活躍中。おもな翻訳作品に『きみに読む物語』、『エミリー・ローズ』、『ブッシュ』などがある。

老人ホーム入居者による"バンド"&"レーベル"結成

は音楽家として、福祉施設や小学校などでワークショップの講師として呼ばれることがあります。例えば、滋賀県のとある児童入所施設では、そこで生活する子どもたちが、日常生活の中で気になる音、好きな音や音楽などを、事前に手渡したテープレコーダーで録音してもらい、それを再生しながら自己紹介をするワークをしたり。また、高知県のとある小学校では、高学年の子ども達が親御さんに「自分たちと同じ世代だった頃、どんな音楽が好きだった?」という"家庭取材"をしてもらって、その答えの中から選曲し、コピーバンドを結成。最終的に参観日に親御さんに演奏をプレゼントするといったことをしたり。とにかく、音楽を演奏することよりも、音楽を"使う"ことで、日常の中で、「へえ、この人こんなこと考えてたんやぁ」とか、家族や友人たちとのコミュニケーションが新しく形を変えていく、みたいなことをやっておるわけです。そんなかんだで色々やってますと、今日はこんな妄想が浮かんできました。
 今回、僕が目をつけましたのは「老人ホーム」。高齢化が加速する中、特養(特別養護老人ホーム)や老健(介護老人保健施設)の空床・入所待ち問題が取り沙汰される昨今。しかしいざ入居した以降もこれで"あがり"ではなく、次に問題となるのは、そこでの生活における「生き甲斐」(僕はヘルパー2級資格者として、老人ホームで介護ボランティアもしてたので、心からそう思う次第)。なおかつ、戦後の復興期を経て高度経済成長をがむしゃらに支え続けた人生の先輩たちの知恵は、若い世代にもっと継承するべき大切な精神文化なのでは…。
 そこで、こんな妄想。ヘルパーとともに、民俗学者や郷土史家がスタッフとして雇われ、聞き書きを実施。そこから生まれたエピソードより、とりわけ幼少時代から培ってき地域の唄や踊りなどの民俗芸能(もちろんロックやジャズとかなんでも良し)を中心とした、バンドとレコードレーベルを結成。施設にはライブハウスとレコーディングスタジオを兼ねて、日本の民俗芸能研究者の卵たちがインターンヘルパーとして活動し、生活と文化が渾然一体となった新しいコミュニケ―ションが起こる老人ホームが完成。定期的にライブ活動を行い、地域の幼稚園や小学校に通う子どもたちとの触れ合いの場も創出。地域のレコード屋やレンタルショップでは、彼ら彼女たちのCDが"ご当地バンド"として陳列。また音楽プロデューサーやミュージシャンも招いてのコラボも実現。様々な世代や分野を超えた地域交流センターとしての役割も果たし、ただの"利用者さん"に収まらない、彼ら彼女たちの"立つ瀬"が浮かび上がるそんな老人ホーム…。もちろんクリアーすべき問題はいろいろあれど、いま各地の福祉現場でおきている文化発信・交流的なケースをみていると、あながち遠い未来でもないんじゃないかな。ぜひぜひ、ご検討したいなんて方がいらっしゃればご連絡をば!

(イラスト:イシワタマリ)

アサダワタル(あさだ・わたる)
日常編集家/文筆と音楽とプロジェクト
1979年大阪生まれ。
様々な領域におけるコミュニティの常識をリミックス。
著書に「住み開き 家から始めるコミュニティ」(筑摩書房)等。ユニットSJQ(HEADZ)ドラム担当。
ウェブサイト

狼と娘

やめ…あの村には親切にしてくれたお婆がいるのよ。


大きな音がして、赤い赤い赤い……
そしてあの子が駆けてくる。
昔一緒に遊んだ時のよう、今でも覚えいるの。
良い子。良い子。

あたたかい……。
この仔が無事で本当によかった。



▽参照作品
まんが日本昔話、東北地方の昔話より「オオカミと娘」

ミホシ
イラストレーター
岡山県生まれ、京都市在住。イラストレーターとして京都を拠点に活動中。
抒情的なイラストを中心に、紙媒体・モバイルコンテンツなどのイラスト制作に携わる。

三"時"元の発明 ~フラッシュバックメモリーズ3D~

あ、私だ。まず断っておきたい。この文章を目にしている今、あなたはこの映画を観ることはかなわないかもしれない。世界最古の管楽器とも言われるディジュリドゥ奏者GOMAを被写体としたドキュメンタリー『フラッシュバックメモリーズ3D』のことである。封切りの1月19日から2週間の限定上映を基本としているようで、この原稿を書いている時点で確認がとれている範囲では、残念ながら少なくとも3D版(2D版も公開されている)については、もうスクリーンで観ることはかなわないようだ。では、新作を取り上げるこの捜査手帳で扱うのは見送れば良かったのではないかと思われるだろう。諸般の事情により試写会が行われなかった今作を、初日初回に京都のシネコンで鑑賞し終えるやいなや、興奮した私は早くも野村雅夫的2013年ベスト候補に登録し、予定や約束事を変更してでも取り上げる決定をした。なぜならば、私は発明に立ち会ったからである。
 アボリジニに伝わる特殊な民族楽器を吹きこなし、独自の音楽活動で人気を博していたGOMAは、2009年に自動車事故によって高次脳機能障害を抱えた。記憶が欠落し整然としない。楽器の吹き方も思い出せない。みるみる忘れていく…。そして、なぜかそれまで絵筆をろくに握ったことのなかったドット・ペインティング的な絵画を驚異的な勢いで量産し始める…。これは、そんな彼が苦難の末にミュージシャンとして復帰を果たし、カメラの前でスペシャルライブを披露するまでの生き様を振り返るドキュメントである。
 絶え間ない忘却に抗おうと文字通り記憶の記録として事故後につけ始められた日記や最小限の字幕こそあれど、ナレーションはない。提示されるのは、事故までに撮りためられていた写真やホームビデオ。GOMA作の抽象的な絵画。事故前後を再現するわずかなアニメーション。そして、この映画のために無観客で行われたライブの映像。以上、当然ながら、3Dたりえるのは最後のライブ映像だけである。
 この状況でどうやって3Dドキュメンタリーなるものを構築するのか。『アバター』のスタッフの弁当代くらいの予算で製作したと語る松江監督の、3D技術の捉え方、その発想の転換が画期的だ。手前に3Dのライブ映像を、奥にはそれ以外の2D素材をどんどん配置することで、まるでフォトショップやイラストレーターといったソフトのレイヤーのように「時間を立体化」してみせたのである。
 上映時間は、ライブの時間とほぼ一致する72分。つまり、観客はライブを観ながらにして、GOMAが辿ってきた半生を同時に知る。空間ではなく時間をレイヤー化したことだけでも大いに感嘆したのだが、実は「このライブのこともGOMA自身はよく覚えていない」と字幕で示される局面があり、私はひっくり返った。なぜなら、この情報によって、否応なく「このライブもまた過去のもの」であることを意識させられるからだ。つまり、監督が撮影した生々しくはあるが過去(近過去とでも呼ぼう)のライブ3D映像を挟む形で、映画を鑑賞する私達の現在と、GOMAの半生という過去(対照させるなら遠過去)の蓄積が鏡合わせになるのだ。手前から、現在・近過去・遠過去と時間が層となって立ち現れる様に圧倒されずにおれるものか。
 ドキュメンタリー映像は「現在」を記録しようとする。ただし、撮ったそばから実際には「過去のもの」になる。私が『フラッシュバックメモリーズ3D』を発明だとしたのは、この作品が3種類の時間を劇場という空間の中で立体的に再現してみせた、恐らく世界初の試みだったからである。劇中「この記憶だけは消さないでください」という言葉に遭遇する。今願うのは、記録と記憶についての考察でもあるこの恐るべきドキュメンタリーの3D方式による鑑賞機会が読者諸賢にも訪れることである。

(C)SPACE SHOWER NETWORKS.inc

『フラッシュバックメモリーズ』
第25回東京国際映画祭コンペティション観客賞受賞
監督:松江哲明
出演:GOMA & The Jungle Rhythm Section他
プロデューサー:高根順次(SPACE SHOWER TV)
製作・宣伝:SPACE SHOWER TV

野村雅夫(のむら・まさお)
ラジオDJ。翻訳家
FM802でROCK KIDS 802(毎週月曜日21-24時)を担当。イタリアの文化的お宝紹介グループ「京都ドーナッツクラブ」代表を務め、小説や映画字幕の翻訳なども手がける。

蒸気のある光景

気がモクモクと上がる工場からは強いエネルギーを感じ、なんだかワクワクする。モクモクにワクワクだ。その様が最も盛り上がるのは、厳冬の夜。闇夜には白い蒸気がよく映える。シャッターを長く開けて撮影すると、蒸気は流れるように表現され、そこにプラントの影や、灯りが投影されると幻想感も増す。撮影ポイントは姫路市網干区なぎさ公園から見える工場。

小林哲朗(こばやし・てつろう)
写真家
廃墟、工場、地下、巨大建造物など身近に潜む異空間を主に撮影。廃墟ディスカバリー 他3 冊の写真集を出版。

第1回

 書家
 川尾朋子

第2回

 字幕翻訳家
 伊原奈津子

第3回

 紙芝居弁士/ラジオDJ
 伊舞なおみ

カバーインタビュー: 聞き手・進行 牧尾晴喜

連載1: アサダワタル 日常再編集のための発明ノート

連載2: ミホシ 古典×耽美

連載3: 野村雅夫 フィルム探偵捜査手帳

連載4: 小林哲朗 モトクラ!ディスカバリー

第1回

 講談師
 旭堂南陽

第2回

 フォトグラファー
 東野翠れん

第3回

 同時通訳者
 関谷英里子

第4回

 働き方研究家
 西村佳哲

第5回

 編集者
 藤本智士

第6回

 日常編集家
 アサダワタル

第7回

 建築家ユニット
 studio velocity

第8回

 劇作家/小説家
 本谷有希子

第9回

 アーティスト
 林ナツミ

第10回

 プロデューサー
 山納洋

第11回

 インテリアデザイナー
 玉井恵里子

第12回

 ライティングデザイナー
 家元あき

カバーインタビュー: 聞き手・進行 牧尾晴喜

連載1: 野村雅夫 フィルム探偵捜査手帳

連載2: 河原尚子 「茶」が在る景色

連載3: 小林哲朗 モトクラ!ディスカバリー

連載4: ミホシ 空間と耽美

第1回

 建築家
 藤本壮介

第2回

 書容設計家
 羽良多平吉

第3回

 漫画家
 羽海野チカ

第4回

 小説家
 有川浩

第5回

 作庭家
 小川勝章

第6回

 宇宙飛行士
 山崎直子

第7回

 都市計画家
 佐藤滋

第8回

 作家
 小林エリカ

第9回

 歌手
 クレモンティーヌ

第10回

 建築史家
 橋爪紳也

第11回

 女優
 藤谷文子

第12回

 ラッパー
 ガクエムシー

カバーインタビュー: 聞き手・進行 牧尾晴喜

連載1: 野村雅夫 フィルム探偵の捜査手帳

連載2: 澤村斉美 12の季節のための短歌

連載3: 小林哲朗 モトクラ!ディスカバリー

第1回

 イラストレーター
 中村佑介

第2回

 書家
 華雪

第3回

 華道家
 笹岡隆甫

第4回

 小説家
 森見登美彦

第5回

 光の切り絵作家
 酒井敦美

第6回

 漫画家
 石川雅之

第7回

 ギタリスト
 押尾コータロー

第8回

 プロダクトデザイナー
 喜多俊之

第9回

 芸妓/シンガー
 真箏/MAKOTO

第10回

 写真家
 梅佳代

第11回

 歌人
 黒瀬珂瀾

第12回

 演出家
 ウォーリー木下
   

カバーインタビュー: 聞き手・進行 牧尾晴喜

連載1: きむいっきょん(金益見) ラブ!なこの世で街歩き

連載2:  野村雅夫式「映画構造計画書」

連載3: 【連載小説】 ハウスソムリエ 寒竹泉美