野村雅夫 フィルム探偵の捜査手帳ループする過去 ~ミッション:8ミニッツ~ |
|
澤村斉美 12の季節のための短歌放射性降下物(フォールアウト)降るはずはなき待ち合はせ栞の紐が薄くにほへり |
|
小林哲朗 モトクラ!ディスカバリー別子銅山 |
(聞き手・進行 牧尾晴喜)
日本とLAに拠点を構え、女優、作家として国境を越えた活動を展開する藤谷文子氏。彼女に、創作活動や国際的に仕事をすることに対する姿勢についてうかがった。
------映画に舞台に文筆業に、と多彩な活動をしてらっしゃいます。それぞれの表現活動は連動していますでしょうか?
藤谷: 脳みそ的には演じている時と書く時は全く別の箇所を使っている感じはとてもします。でも、見るもの経験するもの全ては、シームレスにつながって、影響しあっているのは事実ですね。
------ジャンルを超えた表現活動については、お仕事でもご一緒されていた中島らもさんの影響も多分にあるとは思いますが、他に影響をうけた人は?
藤谷: 大槻ケンヂさんの影響はとても大きいです。
------MBSで出演されていた『パノラマ電波横町~見参!アルチュン』は、街歩きバラエティーの先駆けだったと思います。今でも街をぶらぶらして妄想を繰り広げるなんていうことはありますか?
藤谷: あれは楽しかったですね!今でも散歩は好きです。妄想はいつでも繰り広がっています。
------現在は米国(LA)と日本のそれぞれに拠点を構えて活動しておられますが、言葉や接する人々など、それぞれの場所でまわりの環境の違いが創作活動にどのように影響していますでしょうか。
藤谷: 広がる一方です。どこの国に行っても、『心の人種』が同じ人に出会えば、世界は広くても、どこか、中心の様なものがあって、広がりつつも、てんでばらばらではないと確信します。そして、とんでもない才能を目の当たりにすることがノンストップでできるのです。
------大阪や関西の街で好きな場所や風景は?
藤谷: 夜、淀川の上を走る阪急電車 横町、路地、等。
------「宇宙作家クラブ」会員をされていますが、とくに好きなSFなどの作品(映画)は?
藤谷: 『不思議惑星キンザザ』『ボディースナッチャー』『月に囚われた男』と、とまりません。
------では、好きなSFなどの作品(小説)は?
藤谷: う~ん、強いて言えばカートヴォネガット作品
------女優としてのお仕事のなかで藤谷様にとって印象深いエピソードなどありましたら教えていただけますでしょうか。
藤谷: 関わる作品ごとにおもしろいエピソードはありますが、今回New Yorkで撮った作品は、撮影中に、自分の演じている役が正反対のキャラクターに変わったことですかね。
------今後のビジョンを教えてください。
藤谷: 素敵な人たち素敵な作品たちにどんどん出会うこと。来年『Abigail Harm』という映画が発表されます。New Yorkで撮影しました素敵作品です。
2011年10月19日 大阪にて
式日 [DVD] 監督: 庵野秀明 出演: 岩井俊二, 藤谷文子, 大竹しのぶ, 村上淳, 松尾スズキ |
TOKYO! [DVD] ミシェル・ゴンドリー監督・脚本 / 「インテリア・デザイン」 出演: 藤谷文子、加瀬亮、伊藤歩、大森南朋、妻夫木聡、でんでん |
逃避夢/焼け犬 講談社 (2001/10) |
ドモ又の死 [DVD] 出演: 江本純子, 三輪明日美, 藤谷文子, 野村恵理, 高野ゆらこ |
(C)JME 藤谷文子(ふじたに あやこ) 女優、小説家。1979年大阪生まれ。13歳の時にCM『リハウス娘』に出演、映画『ガメラ・大怪獣空中決戦』のヒロイン草薙浅黄役でデビュー。英語と演技の勉強のため、ロサンゼルスに留学。日本に帰国し、女優としての活動を再開。アメリカ滞在中に執筆された小説『逃避夢』が、『エヴァンゲリオン』や『ラヴアンドポップ』の庵野秀明監督を触発。『式日(shiki-jitsu)』として映画化され、自ら主演も務めた。相手役は、『ラブ・レター』、『スワロー・テイル』の監督:岩井俊二氏が、俳優として演じている。現在はロサンゼルスと日本に拠点を構え、女優としても作家としても、国境なき活動を展開している。 |
や あ、私だ。今月は、「あの『インセプション』を凌駕した」とか、「映画通ほどだまされる」とかいった挑戦的なコピーが気になっていた『ミッション:8ミニッツ』。監督は2009年『月に囚われた男』で長編デビューを飾った、デヴィッド・ボウイの息子ダンカン・ジョーンズである。
シカゴ近郊で起きた電車爆破テロ。乗客は全員死亡。米軍は次なるテロを未然に防ぐため、特殊なシステムを駆使して、アフガン戦線から帰国したスティーヴンス大尉を事故が起こる8分前の列車内へ送り込み、犯人を割り出す任務にあたらせる。ただし、いわゆるタイムトラベルではなく、そのテロで死亡した乗客の脳内に、残像のようにして存在する8分間の記憶の中へと潜入するという方法だ。
今作の設定の妙味は、犯人捜しのミッションが幾度も繰り返されることに尽きる。一度目。大尉は鏡に映る自分が別人であることにたじろいだりしているうち、呆気なく爆発。二度目は、(死者の記憶の残像の中での自分の記憶を頼りに)爆弾のありかを突き止めるものの、肝心のホシは手がかりすら見つからぬまま、あえなく爆発。こうして過去がループし、大尉は自分の脳内と接続された死者の意識の中で何度も死に続ける。映画というよりゲームの登場人物のように不死身なのだ。とは言え、それは脳内の世界。どうして自分が選ばれたのか。大尉はその理由をも探るようになり、やがて受け入れ難い事実に直面する…。
それにしても恐ろしいのは、このシステムの開発者である。人間の精神世界の可能性を探究した結果、国家権力を傘に、研究対象たる人の意識を平喘と搾取してしまうのだ。この種の冷静なマッドサイエンティストの系譜は、映画が終わった後からじわじわと空恐ろしくなる。
なるほど(だまされるというよりは)驚かされるパラレルワールド的な展開や、走る列車内(二階建て車両の見事な造り込み!)でのサスペンスにアクションに人間模様。映画史的な文脈での位置づけも楽しい、間口の広い快作と言えよう。
(c) 2011 Summit Entertaiment,LLC.All Rights Reserved. 『ミッション:8ミニッツ』TOHOシネマズ梅田ほか 全国ロードショー |
野村雅夫(のむら・まさお) ラジオDJ。翻訳家 FM802でNIGHT RAMBLER MONDAY(毎週月曜日25-28時)を担当。イタリア文化紹介をメーンにした企画集団「大阪ドーナッツクラブ」代表を務め、小説や映画字幕の翻訳も手がける。 |
人を待つ間、本を開いていた。ぼさっと空を見上げて、放射性物質が降る、なんてことはないよな、と思った覚えがある。5年前の秋、北朝鮮が地下核実験を行ったとニュースになっていたころのことだ。降るはずはないのだろうけれど、隣国の核の存在が不意に目の前に立ち上がり、かすかな不安を覚えた。ごく普通の生活のうちの、ごく普通の待ち合わせの場面で、目に見えない放射性物質がしんしんと降りそそぐ図をちらりと思い浮かべ、そしてそのまま忘れた。5年経ったいま、自分の歌集『夏鴉』に収めたこの歌を思い出し、言葉が出てこなかった。5年前の歌を辛うじて受けとめ、返事のような歌を作った。
放射性降下物(フォールアウト)降るはずはなき……と詠ひたり五年前われは秋の陽を浴び
磨いたような秋の陽が今年も降りそそぐ。これまでと何ら変わりなく、「ああきれい」と思っている自分がいる。ばかみたいに「きれい」と思う。
澤村斉美(さわむら・まさみ) 歌人。 1979年生まれ。京都を拠点に短歌を見つめる。「塔」短歌会所属。 2006年第52回角川短歌賞受賞。08年第1歌集『夏鴉』上梓。 |
銅の産出により隆盛を得た愛媛県の別子銅山は今「マイントピア別子」と名前を変え、産業遺産を目玉とし、観光に力を入れている。資料館、砂金取り体験、鉱山のテーマパークなど様々な施設があるが、中でもマイントピア別紙東平(とうなる)ゾーンという、山深いところは「東洋のマチュピチュ」と呼ばれ、老練なレンガ積みが見られる。標高750メートルの高地にあるためよく霧が発生するが、それがより幻想的な雰囲気を盛り上げている。
小林哲朗(こばやし・てつろう) 写真家。保育士 保育士をしながら写真家としても活動。廃墟、工場、地下、巨大建造物など身近に潜む異空間を主に撮影。廃墟ディスカバリー 他3 冊の写真集を出版。 |