2007年度 第4回 掌の中のエピソード 〜各職能における小さなニュース〜

コラム第4回のテーマは、『小さなニュース』です。
先月は各職能、ひいては都市における社会活動全体を取り巻くような大きな話題を取り上げましたが、今月はそのミクロ版です。掌に落ちてくる雨滴一つ一つが集まり川になるように、微細なエピソードの集積が、各職能や都市活動を構成しています。先月のテーマであった大きなニュースも、今月の個人体験に基づくエピソードで補完され、共感できるものとなるでしょう。
そんな小さなニュースを集めた今回のコラム、お楽しみください!

スタジオOJMM (設計・研究・翻訳)
代表 牧尾晴喜




歌い踊るザンビアのお母さん達

 歌に生きるアフリカ

私は今、ゴスペルにハマッている。とはいっても、コンサートに行ったりCDを買うわけではない。
現在私が活動するマラウィの事務所では、水曜の朝、スタッフ全員で賛美歌を歌う。いわゆる世界共通の賛美歌を英語で歌っているときはしめやかに歌っているマラウィ人の同僚たちだが、後半の彼らの言語で、彼らのメロディで歌う段階に来ると、すごいエネルギーで歌い始める。ひとりが歌い始めると全員がパートに分かれて合唱し、まさに魂から歌っている!という雰囲気で、そのアフリカ的ハーモニーとエネルギーに圧倒される。しみじみ、彼らは歌いながら育ってきたんだなあと感じる。楽しいとき、悲しいとき、つらいとき、ここではいつも歌が聞こえてくる。
以前、田舎からの帰途、故障車が道を塞いで、山道で5時間一歩も進めなくなったことがある。夜もどんどん更け、山道は延々車の行列。後ろに戻ることもできないありさま。疲れてイライラしてきたとき、後ろのほうのバスからゴスペルが聞こえてきた。ふと見上げると、田舎の夜空は満天の星だった。降ってきそうな星を見ながら聴いた、あの夜のゴスペルだけでも、山道に5時間かんづめになった価値はあったかなと思う。

 

 

西口 三千恵
国際協力
ザンビア/徳島
NPO法人TICO


 FMラジオを手作りするコト

昨年の4月、3人だけでFM放送局を立ち上げるという無謀な事業をやりました。毎日街に出て番組のネタを捜し、人に会って出演交渉、局を知ってもらうために2週に1回のペースでライブや中継イベントをやりながら、日曜以外は一人で毎朝6時にスタジオに入って3時間の生放送をやる。もちろん取材も含めて一人で走り回っていました。半年前に事情により親会社に移動していましたが、何の因果か今年の6月から放送局の運営に改めて参加することになってしまいました。
阪神大震災以来、災害時の安全情報発信に役立つとの目的から日本中に200を越えるコミュニティーFM局が立っています。しかし、「FMラジオ」をやるという漠然としたコンセプトをもとに意味を持たないとも言える自己満足な放送が繰り返されている中で、この限定されたエリアでのラジオが出来るコトとは何なのか?何を伝えるコトができるのか?ラジオの手作りは疑問の連続です。ぜひ、お近くにコミュニティーFMがあるなら、あなたも参加して一緒に答えを探してみませんか?あなたの街のラジオ局をどう育てるかは、街の住人が出すべき答えなのかもしれません。

 

 

中村 謙太郎
インターネットラジオ
大阪・新世界
インターネットラジオGood-AIR !



 遠くに住む仕事のパートナー

去年から、友人とウェブショップを企画している。制作会社に勤務していた頃に得た知識を自分のために使いたくなって、実店舗を経営する友人と手を組んだ。パソコンにはとても弱い友人だけど、店舗の経営はうまくいっている様子。一方私は商売は素人だけど、これまでにサイト制作や海外版の広告翻訳にかかわった実績を生かしたい。小さなウェブショップはたくさん現れてはすぐ消えていくけれど、きっとこのコラボレーションはうまく行く、と楽観的に計画を立ててみた。
しかしフタを開けてみると、実際の問題は知識より予算より、なによりも「やる気」や「勢い」だ。お互い自分の本業にかまけて、ウェブショップ計画を後回しにしてしまう。東京と大阪に離れて住んでいることや、二人とものんびりした性格なのが災いしているのかもしれない。
ずっとメールや電話でばかり打ち合わせをしていたので、先月は友人が買い付けに行っているハノイに乗り込んでミーティングやリサーチをしてみた。買い付けはまったく手伝わなかったけれど、話し合いはなかなか実りが多かった感触がある。やはり一緒に仕事をするには、同じ空間を共有することも大切なのかもしれない。

 

 

山本真実
ローカリゼーション
大阪・南森町
クリエーター自主運営 ワークルーム208




 『キルギシアからの手紙』に
熱い眼差しを送る筆者

 契りを忘れざることを契っての帰国

ODCが独自に認定しているお宝アーティストの一人にシルヴァーノ・アゴスティという才人がいる。映画監督、作家、詩人、映画館・出版社経営者と数々の顔を持つ彼は、何れの分野でも基本的に資金供与を受けず、全ての経費を自分で賄うことで、何にも囚われずに表現できる環境を確保する徹底した自由人だ。評価も高い。常連のヴェネツィアを始めとする各国の映画祭にフィルムを出品しているかと思えば、小説もこれまでに3作品が高名な文学賞へのノミネートを果たすなど、40年余年に渡る彼の経歴は我々を刺激してやまない一方で、その目覚ましい活躍を考えるにつけ、日本での限りなくゼロに近い知名度には歯痒い想いを禁じえない。事態を憂慮した我々は、兎にも角にも日本で彼の作品を享受できる環境を整えねばと大志を抱き、取っ掛かりとして最近作『キルギシアからの手紙』という小説を翻訳した。訳を本人に届けると、彼は目を丸くしながら喜んでくれた。しかし、我々としてもこれで雀躍して終わってはいけない。映画の紹介も本人から直々に託されたことだ。代表の私は今月で帰国し、活動の拠点をローマから大阪へ移す。彼との約束を胸に、発掘したお宝の開陳に邁進したい。

 

野村雅夫
イタリアの文化紹介
大阪/ローマ
大阪ドーナッツクラブ




 虹のようなcycleと

4周年感謝祭のフライヤーや記念につくったステッカーのデザインで虹を意識し始めてから、やたらと虹に出会うようになった。
ライブに行けば虹の描かれたワンピースを着ておられたり、むしょうに聴きたくなって買ったCDのジャケットに虹が描かれていたり、七夕から始まったRでの展示では空に昇っていくような虹が描かれていたり。他にもまだまだあるのだが、とにかく虹づいている。なので虹についてもよく考えるのだが、今年は本当に「虹が出た」年なのだ。
私は、人と人が繋がりあって虹ができると考えている。さらに、お互いの大事にしているもので繋がりあえたらそれは本当に強いものになるのではないかと思う。
沢山の人達に支えられ繋がっていることを実感できた今、そこへの感謝は忘れずさらに先へと進みたい。次は虹をつかんでみたいと想う。そして最終的に虹は繋がりゆき虹の輪になるのではないかと。私は虹の輪をみてみたい。今年の夏はその始まりの笛を鳴らすつもりだ。
RcafeのRにはいろんな意味があるが今年のRはどうやらRainbowのRらしい。Catch the rainbow∞

 

 

藤井 有美
カフェ
大阪・中崎町
R cafe



 屋上で仁王立ち

だんだん暑くなってダラ〜としてきたこの頃。今月のお題を考えてみると、全然浮かんできません。
とはいえ、最近なにをしていたかと思い返すと、自分のCDをItuneにインポートして整理しようと思い、CD800枚をひたすらパソコンへ入れ替える地味な作業にへこたれつつ、それでも完了までこぎつけて(2週間かかった)、自分へのごほうびに、昼間なのに屋上までいって目の前のOBPのビル群(のサラリーマン)を見ながらビールを飲んでささやかな達成感を味わい、あまりにもバカバカしい時間の使い方に笑った。
そんな話を、暑くなってきてメガネヤでビールを飲む人(お客さん)が増えてきたので、話していると居酒屋やBarで飲むんじゃなくて、古本屋で飲むのが細やかな贅沢だといってくれるひとがいて、メガネヤは(昼間からお酒飲んでゆるされる)古本屋でよかったと思った。
そう、インポートが終わってみると100枚ほどいらないCDが出来たけど、メガネヤではこれはすぐに売れないなぁ…という事で前の職場の中古屋に売った。ホントにメガネヤはモノが売れない古本屋だなぁと思った。(お酒は飲めるのに)

 

 

市川ヨウヘイ
古本屋
大阪・京橋
古本屋メガネヤ(地図)



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