2007年度 第3回 ウラガワの始め方 〜各職能を取り巻く業界ニュース〜

コラム第3回のテーマは、『業界ニュース』です。
各職能を取り巻く状況を俯瞰することから、言語、文化、法制度、といった様々な要素が見えてきます。笑い話だったり、あるいは、喫緊な課題ではないように思えても、その背後には新しい時代の足音があるのかもしれません。これらの多様な業界ニュースは、都市における社会活動が孕む問題の縮図と言えるでしょう。
第3回の今回は、「ウラガワ」の取っ掛かりとして、各職能を取り巻く業界ニュースをお届けします。笑い話から社会派までの今回のコラム、お楽しみください!

スタジオOJMM (設計・研究・翻訳)
代表 牧尾晴喜



 機械が人力にとって代わるとき

ローカリゼーション業界の範囲はとても広いけれど、ものすごくざっくり言うと翻訳業界ということになる。そして翻訳業界に共通するのは、どのような翻訳も一度はコンピューター上で文字化されるということ。そんなわけで翻訳支援のソフトウェアも近年どんどん充実してきている。特に自動翻訳の分野などは発展目覚しく、このまま進化したら私の仕事の何割かはなくなってしまうのでは?とすら思う。プロ仕様ではないけれど、個人的にはGoogleが開発した自動翻訳システムが興味深い。今までの自動翻訳システムと違い、大量の翻訳サンプルを利用した統計的学習手法から翻訳モデルを構築しているそうで、外来語の音訳や一般的な固有名詞を上手に見分けている。完璧な翻訳には程遠いものの、カッコつきの翻訳結果の出し方など、読み手にとってみたらその未完成さすら便利と思える表現で気が利いている。
わが208 Minamimorimachiのブログもこのサービスを仕込んだので、さっそくためしにクリック。すると「chestnut thornback tar」という見慣れない一文が…。「クリエイター」を「栗・(魚の)エイ・タール」と認識したらしい。どうやら、もうしばらくは翻訳者の出番も十分ありそうだ。

 

 

山本真実
ローカリゼーション
大阪・南森町
クリエーター自主運営 ワークルーム208




 手始めに俳優と一体化する筆者

 映画人気の影で 〜ドーナッツ暗躍の目論見〜

邦画が好調である。日本映画製作者連盟の発表によると、2006年劇場公開総数821本のうち邦画が417本。僅差ながらも21年ぶりに洋画を上回ったと喧伝された。スクリーン数は三千の大台を超えるわ、公開総数自体も前年度を百本近く上回るわで映画業界全体の盛況もデータからは窺い知れる。これは映画ファンとしては諸手を挙げての大歓迎だが、日伊間をフィルムで繋ぎたいと妄想を肥大化させる我々ODCとしては喜んでばかりもいられない。邦画面目躍如と映画ブームの影で、イタリア映画の配給数が伸び悩みの憂き目に遭っているのだ。洋画の中では公開数七位につけてはいるものの、その数は一位アメリカのほんの七分の一で20本程度。しかもその半数以上は東京で開催されているイタリア映画祭のみでの公開だ。地方客にしてみれば、年間五本前後というのが実情だろう。これには我々ドーナッツも丸く収まってはいられない。実はイタリア映画も邦画同様製作本数が回復傾向にあり、優れたフィルムも雨後の筍の如く現れている。臍を噛んでばかりでは遣る瀬無いし立つ瀬もない。我々は額を付き合わせ知恵を絞っている。ドーナッツの暗躍が陽の目を見る日を鷹揚に待たれよ。

 

野村雅夫
イタリアの文化紹介
大阪/ローマ
大阪ドーナッツクラブ




 いきもののびる6月に そろそろ植え替えなどしてみようか

Rcafeがある中崎町という街は、この数年間で大きく変化した街である。古い民家を利用したカフェ、雑貨屋などが随分増えた。週末などは、雑誌やフライヤーを片手に歩く若者が、街中にみられる。そんな変化の真っ只中にあった中崎町だが、今年に入って新たな変化がみられているように思う。そこで今回は、喫茶店業界ではなく中崎町という独特の街の動きを、私の目線からみてみようかと思う。
中崎町に個人経営の小さなお店ができ始めたのが七年前くらいで、五年前私が中崎町を知った頃はまだ何件かだった。Rがオープンした頃は、急激に新しいお店が増え雑誌などにもとりあげられるようになった時期だったと思う。それからずっと増え続けていたのだが、五年目に入った今年、移転するお店が出てきた。それもRがオープンする前からあったお店ばかりで、長くいた中崎町からいなくなるというのは寂しく感じてしまうが、どちらのお店も新たな場所でまた始められるのでこれは素晴らしいことなのだろう。植物の鉢を成長とともに大きくしていくようなことなのだろう。そんな中崎町にいることはとても刺激になり、私も少しずつでも大きな鉢に植え替えていきたいと思う。私がどこまで大きな根を張れるか、また中崎町に植えられる新たな苗がどんなだろうか、どちらもとても楽しみである。

 

 

藤井 有美
カフェ
大阪・中崎町
R cafe



 アナログな世界なものですから

さてさて、今回は業界ニュースということですが、古本屋にとっての気になる業界のニュースっていったい…と頭を抱えてしまう。
少し前(3〜4年ほど前かな?)は、関西でも新しい古本屋(ブックカフェも含め)がひょこひょこと出来ていたようですが、最近は前程に聞かないし。そもそも新店の話は街の雑誌にとっての気になるニュースだったりするんじゃないのかな?
それじゃあ古本屋の業界って、昔ながらのお店か、大きな新古書店(CMしてるような古本屋です)て事になるのかな?でもどうしたって業界のニュースって黒い噂みたいな事の方が多いし、そんな話はやっぱり書けない。
あとは何でしょう?Amazonかな?そう!Amazonの『この本を買った人は他にもこの本も買ってます』機能は、古本屋的に見るとほんとに色々と面白い!ただ、この機能を使いこなして商売に反映させている古本屋って多くない。財務の管理にPCを使ってるところは多くても、個別の商品管理にPCを使ってデータを持っているとこは多くないのがアナログな古本屋業界。まぁ今更無限にある本の個別管理なんて、判ってても誰もしたくないですもん。(でも、そろそろ始まってますけども)

 

 

市川ヨウヘイ
古本屋
大阪・京橋
古本屋メガネヤ(地図)


 HIV/AIDS(エイズ)問題

国際協力業界で話題の中心にあることのなかでも、エイズ問題は深刻なテーマだ。健康の問題だけではなく、エイズは多方面に打撃を与えている。働き盛りの年代で発症し死亡する場合が多いため、感染率が高い国では経済に与える影響は計り知れない。親を亡くし孤児となった子ども達の、教育や福祉の問題もある。先生たちもどんどんエイズで亡くなり、学校に先生が足りなくなるというケースもある。特にアフリカでは感染率が非常に高い国が多く、平均寿命が35歳に満たない国もある。
私が暮らしているマラウィでも、感染は深刻だ。多くの国際機関やNGOがこの国で、エイズ関連の活動を行っている。町を行く車を見ていると、エイズ関連の活動をする団体であることを示すマークをつけた車を必ず目にする。マラウィ人の同僚たちの多くが、孤児になった親戚の子どもの面倒を見ている。誰もが皆、何らかの形でエイズの影響を受けている。
これは対岸の火事じゃない。日本でも感染率は年々上昇している。アフリカの国々も、初めから感染率が10%以上もあったわけじゃない。自分には関係のない問題だと思っている間に、日本でも静かに感染が広まる危険性だってある。

 

 

西口 三千恵
国際協力
ザンビア/徳島
NPO法人TICO


 権利の氾濫

日本国憲法の21条に、「報道の自由」というのが定められている。インターネットラジオが法律で規制されていないとはいえ、日本国内で放送メディアとして存在している以上は認められるべき権利だろう。だが、「自由」って言葉は厄介だ。「何でもやっていい」っていうとは明らかに違う。1つの自由が他の自由や権利を奪っていいはずがない。自由には責任と義務が潜んでいるものだと僕は思う。例えば音楽著作権の問題。一部のネットラジオでは、JASRACなどに管理されている楽曲を、無許可で好き勝手にかけている。もちろんそれによってアーティストに著作権料が入ることはない。現行法の限界などややこしい理屈には今回は触れないにしても、これは権利の侵害に他ならない。「自由」を掲げて侵略を繰り返す。まるで過去に繰り返された戦争の縮図を見ているかのようだ。メディアが侵害しうる権利はあまりにも多い。時には人として生きる権利すらも奪うことがある。一度だけ、そんな場面に出くわした事もあった。「インターネットだから何でもやっていい」という感覚は危険だ。地上派メディアに比べ、あまりにマナーや常識が失われつつあるように思える。これからインターネットラジオがメディアとして信頼と本当の自由を手に入れようとしている時だからこそ、僕たちに求められる責任と義務は大きい。

 

 

中村 謙太郎
インターネットラジオ
大阪・新世界
インターネットラジオGood-AIR !



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