2007年度 第1回 『ウラガワ』への入り口 〜各ライター・ジャンルの紹介〜
現代都市の多様性を扱うハイブリッド・コラム、2年目のテーマは、『夢と働き方』です。
自分のスキルや魅力をブランドの域まで高める「セルフ・ブランド」や、個人レベルでの「ものつくり」である「パーソナル・ファブリック」といった言葉を例に出すまでもなく、「働き方」に対する考えは、特に都市において大きく変わりつつあります。また逆に、このような考え方の変化が、都市の在り方を大きく変えています。
あらゆる分野のプロとして必要であろう、信念や情熱を貫く姿勢。こういった、敢えて青臭い言い方をすれば「夢」を持って働く人々が、様々な職能、ひいては都市の活動を支えています。今年度の連載では、そんな夢や働き方を目指す6人がライターとなり、時に気禀とともに、時に舌鋒鋭く、その分野でのエピソードをお届けします。
第1回の今号では、まず各ライターの自己紹介として、活動ジャンルと、その世界に足を踏み入れることとなった経緯を書いてもらいました。遠くて近い『ウラガワ』へのプロローグ、お楽しみください!

スタジオOJMM (設計・研究・翻訳)
代表 牧尾晴喜




ラジオ収録現場

 ラジオライフ
「インターネットラジオ」と検索をかけてみるととんでもない数のサイトがヒットします。まだ知らないって方も多いでしょうが、そんな無数にある中の一つが僕の運営しているインターネットラジオGood-AIR!です。
多くの人が一度はカッコよく音楽を流すラジオDJに憧れを持つようで、簡単な機材とちょっとした知識でラジオができるとなると気軽に始めてしまうわけです。ところが、人間は飽きっぽいもので、2・3回放送して辞めてしまう人がほとんど。そんな中で、スタートして8年目に入っても続けている僕はよっぽどの変わり者なんすかね。放送の世界に入ったのは高校生の時。いろんな偶然と環境が僕を「高校生パーソナリティー」なんてのに祭り上げてくれて、3つのFMで番組をやりながら取材とコンパと高校生活の毎日。あの頃の生活は今考えても人生で一番忙しい時間だった気がします。先輩や制作会社、局の人にはいろんな事を勉強させていただきました。放送ってのは真剣勝負の世界。ちょっとした言葉で傷つけたり心を揺さぶるような衝撃を与えたりできるメディア。そんなラジオを10年間やってきた僕の思い、言葉をペンに持ち替えて書いてみようと思います。
 

 

中村 謙太郎
インターネットラジオ
大阪・新世界
インターネットラジオGood-AIR !



 仕事場をロンドンから大阪へ
13年住んだロンドンから大阪に転居しあっという間に一年。日本でのフリーランスの仕事も軌道に乗ってきた。この仕事を始めたきっかけは、留学中に翻訳と字幕・印刷物を制作するプロダクションに就職したこと。ヨーロッパや中東、アジア諸国の言語で制作をすることが多く、様々な人種や文化に触れることのできるとても楽しい職場だった。
帰国を決めたときは「今さら日本に住むなんて…」と言う永住組の友人もいたが、住んでみたらストレスはあまり感じない。大阪という場所のせいなのか、フリーという職業柄なのかはわからないが、ありがたいことにロンドン時代と同じペースで仕事ができている。
違いがあるとすれば、扱う言語の数だ。日本での外国語版制作は、ほとんどが英語と中国語に韓国語で、その他の言語が必要とされる場はとても少ない。今は多数の言語を扱うプロジェクトに参加する機会もなく、英語ばかりでちょっと寂しいと思ったりする。
今年は制作業に加えて、ウェブサイト運営のプロジェクトを計画している。このサイトは夏までにスタートする予定(あくまで予定…)。楽しいものになりそうなので、このコラムでも紹介できるといいなと思っている。
 

 

山本真実
ローカリゼーション
大阪・南森町
クリエーター自主運営 ワークルーム208




大阪ドーナッツクラブ活動成分表示

 ドーナッツ的隙間文化事業へのいざない
大阪ドーナッツクラブ。誰が言ったかODC。その代表を務めるのが私、野村雅夫。誰が言ったかポンデ雅夫。恐ろしいことに、団体名を名乗っても何を目的とする集まりなのかどれほど想像力をマッチョにしても誰にも皆目見当がつかないと予想されるので、読者諸賢の度量の大きさに甘えて、ここはひとつ活動の概要を記してみようと思う。我々が自らに課している責務は、我々からすれば「これは!」という価値があるにもかかわらず何らかの理由で日本での紹介が遅れているイタリアの映画・演劇・文学作品に一条の光を照射してやることである。映画祭の企画、演劇の上演、小説・戯曲の翻訳。いかなる理由でそんな金にもならぬ面倒事に足を突っ込んでしまったのかと慈悲深い読者諸賢は同情と憂慮の念を禁じえないかもしれない。しかし、我々がそんな人様の心配をよそに日夜崇高な作業にいそしんでいるのは、放っておいたら誰もやりそうにないからである。読者諸賢が多忙な日常の間隙を縫ってこのコラムを閲覧しているように、我々は商業的な文化産業の間隙を縫って活動を行っている。さても、既存の社会的な軌道とはおよそ異なる探検者的な我々を一年の間見守っていただきたい。
 

 

野村雅夫
イタリアの文化紹介
大阪/ローマ
大阪ドーナッツクラブ



 夢の途中、桜の時。
初めまして。大阪の中崎町という古い町並みが残る場所でRcafeという喫茶店をやっています。
私の場合、「夢だった仕事に就いている」のではなく、「Rcafeをする中で自分の夢が見えてきた」そんな感じです。というのも、大学の卒業制作がきっかけだからです。卒業制作として実際に空家だった長屋を改装し、カフェとしてよみがえらせました。それを続けることとなり、今に至っています。
先月、Rcafeは4周年を迎えられたのですが、たくさんの笑顔に囲まれて本当にRcafeにいられること、これまでの出会いや繋がりすべてに感謝しています。私がRで大事にしたいことがはっきりしてきた今、それを整理し、伝えていきたいという気持ちからこのコラムを書かせて頂くことにしました。自分の中にある確かな気持ちを真ん中において人と接すること、これは私が大事にしていることの一つです。これから一年を通してさらに自分と向き合えたら、向き合うことでまた多くの人と出会えたら、そんな期待とともに今ここにいます。一年間どうぞよろしくお願いします。Rに咲いた満開の桜をそえて。
 

 

藤井 有美
カフェ
大阪・中崎町
R cafe



 a fine and private bookstore
はじめまして、古本屋「メガネヤ」の市川です。
「メガネヤ」のはじまりは数人で集まれる「場所」が欲しい話から。僕はそこで古本屋をすることになり、その時のメンバーがみんなメガネをかけていたので、古本屋の名前が「メガネヤ」に。古本屋の世界にはバイトで足をつっこんでいて、やるなら自分の好きに古本屋をしたくてコツコツと本を集めていたのに、今「メガネヤ」をしているのは僕ひとりだけ。酒の席のノリなんてそんなもんです。
結局ひとりではじめた「メガネヤ」は見つかりにくい小さなビルの2階。お店としてはハードルが高いんですが、常連さんになってくれているお客さんは古本屋に来ているよりも「メガネヤ」に来てくれているみたい。ある日、店のチャイムが鳴ってドアを開けると制服を着た女の子が立っていて「今日はお店開いてないんですか?」って…。最初はびっくりですけど今ではすっかり常連さんの彼女の中で「メガネヤ」は居場所のひとつになった様子。結局、古本屋としてより「場所」としての「メガネヤ」の目的をはたしているのが面白いです。このままでは売れる店には程遠いですが「心地よく秘密めいた本屋」には近づいてるかなと思います。
 

 

市川ヨウヘイ
古本屋
大阪・京橋
古本屋メガネヤ(地図)



 昨日はアフリカ今日は日本、明日は?
日本で十年近く会社員をしていた私が国際協力の世界に入ったきっかけは、週末参加のボランティア活動だった。のめり込んだらトコトンの私は、一念発起してイギリスへ留学。国際開発を勉強した後、徳島に本部を置くTICOに入った。
最初に赴任した国はアフリカ、ザンビア。期待と不安いっぱいで向かった私を待っていたのは、想像以上にハードな日々だった。皆さんは国際協力と聞いてどんなイメージを持つだろう?仕事の80%は怒ったり、つまらないことに奔走したりの日々。いいことばかりじゃない。でも、残りの20%に、それを補って余りある喜びと充実感がある。ひとつの国をもって全体を語ることはできない。だけど、最近思うのは、この業界で生きていくには、数少ない喜びの体験を糧に苦境を乗り切るしかないんじゃないかということ。「もう知らん!」としょっちゅう叫びながら、それでも続けている私って、すっかりハマッてるなあと思う。
新規プロジェクトへの参加要員として三月に日本に呼び戻されたのに、これがなかなか始まらない!そんなわけで、今は徳島で仕事をする日々。次はどこへ行くのやら・・・。そんな私が一年間、国際協力のウラガワをお届けします。
 

 

西口 三千恵
国際協力
ザンビア/徳島
NPO法人TICO



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